天武天皇は、日本の歴史において大きな転換点を作った天皇の一人です。672年の壬申の乱に勝利し、豪族中心の政治から天皇中心の中央集権国家へと体制を変え、律令制度の基礎を築きました。彼の皇后であり、後に即位した持統天皇と共に、日本の統治体制を整えたことでも知られています。また、天武・持統天皇陵は日本では珍しい夫婦合葬の陵墓であり、持統天皇の火葬は日本の火葬文化の始まりとも言われています。本記事では、天武天皇の生涯や業績、持統天皇との関係、そして陵墓や火葬にまつわる歴史までを詳しく解説します。
天武天皇の生涯と即位の経緯
天武天皇は第38代天皇で、即位前は大海人皇子（おおあまのみこ）と呼ばれていた。父は第34代舒明天皇（じょめいてんのう）、母は皇極天皇（のちに斉明天皇）であり、天智天皇（てんじてんのう）の弟にあたる。
672年、天智天皇の死後、その子である大友皇子（おおとものみこ）が即位（後の弘文天皇）すると、大海人皇子は吉野に身を隠した。しかし、まもなく挙兵し、大友皇子と戦うことを決意する。これが壬申の乱である。大海人皇子軍は近江大津宮を攻略し、大友皇子は自害。勝利した大海人皇子は673年に即位し、天武天皇となった。
天武天皇の政治改革と律令制度の基礎
即位後、天武天皇はそれまでの豪族中心の政治から、天皇を中心とする中央集権体制へと改革を進めた。これは、後の律令制度につながる重要な転換点となる。
律令国家の基礎作り
天武天皇は「八色の姓（やくさのかばね）」を制定し、豪族の身分制度を整理した。従来の氏姓制度を改め、天皇に忠誠を誓う新たな序列を確立することで、天皇中心の国家体制を強化した。
また、国号を「倭」から「日本」へと改めたともされ、唐（中国）や新羅との関係を見直しながら、独立した国家体制を構築しようとした。
仏教政策と文化振興
天武天皇は仏教を保護し、法興寺（後の元興寺）や薬師寺の建立に関わったとされる。また、『古事記』や『日本書紀』の編纂を命じ、神話や歴史の整理を進めた。特に『日本書紀』は、後の国家神道の基盤ともなる重要な歴史書となる。
持統天皇との関係と共同統治
持統天皇（645年～703年）は、天武天皇の皇后であり、後に第41代天皇として即位した。彼女は天智天皇の娘であり、天武天皇の妻となることで、天智・天武両系統の血統をつなぐ役割を果たした。
天武天皇の死後、皇位は草壁皇子（くさかべのみこ）が継ぐ予定だったが、彼が若くして亡くなったため、持統天皇が即位。彼女は藤原京を造営し、律令国家の基盤をさらに整備した。また、孫の文武天皇を育て、持統天皇の時代に本格的な律令制度が確立されていく。
天武・持統天皇陵と火葬の歴史
天武・持統天皇陵（奈良県高市郡明日香村）
天武天皇と持統天皇は、奈良県高市郡明日香村にある「天武持統天皇陵」に葬られている。正式名称は「檜隈大内陵（ひのくまのおおうちのみささぎ）」とされる。この陵墓は、日本では珍しい合葬墓であり、天皇と皇后が同じ陵墓に葬られるのは極めて異例である。
持統天皇と日本初の火葬
持統天皇は、日本で初めて公式に火葬された天皇とされている。従来、日本では土葬が一般的であったが、持統天皇の火葬は仏教の影響を受けたものと考えられる。彼女の火葬は藤原京の南の地で行われ、その遺骨は天武天皇とともに埋葬されたとされる。これが日本における火葬の先駆けとなり、後の天皇や貴族にも広がっていった。
天武天皇の歴史的評価
天武天皇は、日本の中央集権国家の基礎を築き、律令制度の原型を作り上げた天皇として高く評価されている。壬申の乱に勝利し、自らが権力を握ると同時に、天皇の権威を強化し、独自の国家運営を推し進めた。その政策は持統天皇によって受け継がれ、奈良時代へとつながる国家体制の礎となった。
また、文化面でも、『古事記』『日本書紀』の編纂や、仏教の保護など、日本のアイデンティティ形成に重要な役割を果たした。天武天皇の死後も、その政治理念は日本の律令国家の根幹として受け継がれ、後の時代に大きな影響を与え続けた。
まとめ
天武天皇は、日本の歴史において極めて重要な役割を果たした天皇である。壬申の乱に勝利し、中央集権的な国家体制を構築した彼の改革は、日本の律令制度の礎となった。また、持統天皇との関係も深く、彼女と共に律令国家の完成を目指したことが、日本の歴史に大きな影響を与えた。
さらに、天武持統天皇陵は日本では珍しい夫婦合葬の陵墓として知られ、持統天皇の火葬は日本における火葬文化の始まりとされている。こうした点を踏まえると、天武天皇は政治・文化・宗教のあらゆる面で後の時代に大きな影響を残した人物と言える。
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