「中国4000年の歴史」というフレーズは、中国の長い文明の歴史を象徴する言葉として広く知られています。しかし、この4000年の歴史は本当に事実なのでしょうか？そして、その背景にはどのような意味があるのでしょうか？また、日本と中国の歴史的な違いを考えると、中国は王朝が変わるたびに新たな時代を迎えてきましたが、日本は天皇制を維持しながら長い歴史を紡いできました。本記事では、中国の4000年の歴史の真実と日本との歴史的な違いについて詳しく解説します。
4000年の歴史は事実か？
「4000年の歴史」という表現は、中国文明の始まりを紀元前2000年頃の夏王朝にさかのぼることから来ています。
夏王朝は、伝説的な最古の王朝であり、考古学的には紀元前2070年頃から存在していたとされています。その後、殷（商）や周といった古代王朝が続き、中国は長い歴史を積み重ねてきました。
実際に中国の考古学的証拠が揃うのは、殷（商）王朝の時代（紀元前1600年頃）からで、これ以降の王朝については明確な遺跡や文献が残されています。このため、「4000年の歴史」というのは、伝説的な王朝を含めてのカウントであり、実際に証拠が揃うのは約3000年程度と考えるのが妥当です。
中国4000年の歴史は嘘？ホント？元ネタはテレビCM
中国4000年というキャッチコピーは、コピーライターの糸井重里さんが1981年に明星食品が販売したインスタントラーメン「中華三昧」のCMで採用され、その影響で日本人は中国は長い歴史があると思い込んだと考えられています。つまり4000年という元ネタはテレビCMです。たしかに中国には4000年前にも王朝があり、さまざまな抗争を繰り返し、国がたくさん生まれては消えてということを繰り返してきました。しかし、このような観点で言えばどこの国でも4000年前に人々は生活を営んでおり、中国だけが長い歴史があるとは言い難いのです。中国4000年の歴史は嘘ではないけれど、ホントに連続した歴史があるとも言えないというものです。
文化的な生活レベルの始まりはいつか？
中国で本格的な都市文明や文字の使用、そして王朝としての支配が確認されるのは、殷（商）王朝の時代からです。殷王朝では、甲骨文字と呼ばれる文字が使用されており、これが中国最古の文字として知られています。この時期に都市国家が形成され、王が祭祀を通じて民を統治する体制が整っていました。
殷の後に成立した周王朝（紀元前1046年頃）は、封建制を導入し、さらに広範な地域に文化と政治の影響を及ぼしました。これが現在の中国文化の基盤を作ったとされており、ここから中国は高度な文明社会として発展を遂げていきます。
このように、紀元前1500年から紀元前1000年頃には、すでに中国で複雑な社会構造と文化的生活が発展していたと考えられます。
4000年の歴史が強調される意味
「4000年の歴史」というフレーズは、中国の長い歴史と文化を強調することで、中国が古代から続く文明国家であることを示しています。中国は多くの民族が存在する広大な国であり、複数の王朝が興隆と滅亡を繰り返しながらも、その文化的な伝統や哲学、技術を継承してきました。
例えば、儒教や道教といった思想、漢字や紙・印刷技術、農業の発展など、古代から現代に至るまで多くの文化的な遺産が、中国を「文明の中心」として位置付けてきました。このため、「4000年の歴史」という表現は、こうした文化の連続性と、古代から続く伝統の深さを強調する意味合いを持ちます。
中国と日本の歴史の違い
中国と日本の歴史的な違いは、王朝の継続性と国家のアイデンティティにあります。
王朝の交代と国家の変化
中国の歴史では、王朝の交代が頻繁に起こり、その都度支配者や政治体制が大きく変わってきました。例えば、秦から漢、唐、宋、元、明、清へと、支配者が変わるたびに政治制度や社会体制も刷新されました。各王朝は、自らの正統性を示すために前王朝の文化や政治を否定し、新たな体制を築くことがありました。これにより、歴史が断絶し、新しい国家として再スタートする側面が強いのが中国の特徴です。
日本の天皇制と継続性
一方、日本は、古代から現代に至るまで天皇制を中心とした政治体制が続いています。初代神武天皇から現在の天皇まで、約2600年にわたり天皇の系譜は一貫して続いており、国家としての継続性を強く持っています。天皇は時代によって権力の実態が変わることはあっても、日本の国体の象徴としての役割を担ってきました。
この点において、日本の歴史は一貫性と連続性を持つとされ、中国のような王朝交代の度に国家が変わるという歴史の変化とは異なる性質を持っています。天皇制の継続が示す日本の安定感は、中国における頻繁な王朝交代とは対照的です。
中国と日本の歴史の価値
中国の4000年の歴史が強調されるのは、その長い文明の伝統と、様々な王朝のもとで築かれてきた文化の豊かさにあります。しかし、それは王朝が変わるたびに国家体制が変化し、新しい時代を迎えてきた歴史でもあります。
一方、日本の天皇制の継続は、一つの国としての連続性と統一性を保ちながら長い歴史を紡いできたことを意味しています。これは、国家としてのアイデンティティを保ち、時代が変わってもその根幹を変えずに存続している点で特異です。
中国の歴史と日本の歴史、それぞれの長さや価値は異なりますが、どちらも東アジアの文化と社会を形作ってきた重要な要素です。中国の「4000年の歴史」が象徴する文明の多様性と、日本の「天皇制の継続」が示す歴史の一貫性、これらはそれぞれの文化を理解する上で欠かせない視点です。
まとめ
「中国の4000年の歴史」は、その文明の長い発展と文化の豊かさを示すものですが、実際には王朝交代に伴う断絶と新しい時代の再構築が繰り返されてきました。一方、日本の天皇制の継続は、国家としての連続性を保ちながら長い歴史を持つことを示しています。中国と日本、両国の歴史にはそれぞれの価値と特色があり、共に東アジアの歴史を深く彩っています。
