「続日本紀」とは?奈良時代の文武天皇(697年)~桓武天皇(791年)の歴史

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『続日本紀(しょくにほんぎ)』は、奈良時代を中心とした94年間の出来事を記した日本の正史であり、六国史の第二にあたります。文武天皇の即位(697年)から桓武天皇の延暦10年(791年)までを対象としており、律令国家が完成し、仏教や国際交流が盛んになった奈良時代の姿が詳細に描かれています。

この記事では、『続日本紀』の編纂背景や内容、さらに原文・書き下し・現代語訳を示しながら、この歴史書の魅力に迫ります。

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続日本紀の編纂と特徴

『続日本紀』は797年に完成しました。編纂を主導したのは菅野真道や藤原継縄らで、漢文体で記されています。中国の「正史」に倣い、天皇ごとの政治・祭祀・外交・災異などを記録する体裁をとり、日本独自の律令制国家の正統性を示す役割を担いました。特徴として、災害・飢饉・天変地異の記録が多く、仏教行事や外交使節の往来についても詳細に記されています。

六国史(りっこくし)とは?

六国史(りっこくし)とは、奈良時代から平安時代にかけて編纂された日本の正史(勅撰国史書)の総称です。『日本書紀』から『日本三代実録』までの6つの歴史書を指し、天皇の命によって国家事業として編まれました。中国の正史を手本にしながら、日本独自の歴史叙述を確立した六国史は、当時の政治・社会・文化を知るうえで欠かせない史料となっています。

六国史は以下の6つで構成されており、それぞれ扱う時代が異なります。

国史名 編纂年代 内容の対象時期 時代区分
日本書紀 720年 神代~持統天皇(697年) 奈良時代初期に編纂、神話から律令国家成立まで
続日本紀 797年 文武天皇(697年)~桓武天皇(791年) 奈良時代全般
日本後紀 840年 桓武天皇(781年)~淳和天皇(833年) 奈良後期~平安初期
続日本後紀 869年 仁明天皇(833年)~文徳天皇(850年) 平安時代前期
日本文徳天皇実録
(日本文徳天皇實録)
879年 文徳天皇(850年~858年) 平安時代前期
日本三代実録
(日本三代實録)
901年 清和天皇(858年)~光孝・宇多・醍醐天皇(887年) 平安時代前期

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記録される時代の流れ

対象となる時期は以下の通りです。

天皇 在位年 主な出来事
文武天皇 697~707年 藤原不比等の台頭、遣唐使の派遣
元明天皇 707~715年 平城京遷都の準備、古事記編纂
元正天皇 715~724年 養老律令の完成、続日本紀の編纂体制整備
聖武天皇 724~749年 大仏建立、国分寺・国分尼寺の設置
孝謙(称徳)天皇 749~770年 道鏡の台頭、仏教政治化
光仁天皇 770~781年 藤原氏と天武系の権力抗争
桓武天皇 781~806年(本書では791年まで) 平安遷都準備、蝦夷討伐(坂上田村麻呂の前段階)

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原文・書き下し文・現代語訳

『続日本紀』の記述を例にとり、その雰囲気を味わってみましょう。

原文(漢文)

「天平勝宝四年三月、天下大いに旱す。百姓飢え死ぬる者多し。」

書き下し文

「天平勝宝四年三月、天下大いに旱(ひでり)す。百姓、飢ゑ死ぬる者多し。」

現代語訳

「天平勝宝四年(三月)、全国的に大干ばつが起こり、民衆の間で餓死する者が多かった。」

このように『続日本紀』では、政治の記録に加えて天候不順や疫病などの災異も多く書かれています。天皇の統治と天の動きが結びつけられ、政治の正統性や宗教的な意味づけが付与されている点が特徴的です。

原文は「学習院大学文学部日本語日本文学研究室のコレクションを電子データで保管した国書データベース」などで確認できます。

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続日本紀に描かれる奈良時代の姿

『続日本紀』を通して見える奈良時代は、仏教が国家的祭祀の中心に据えられ、国分寺の設立や大仏建立などが進む時代でした。一方で、天然痘の流行や飢饉など災害も多く、人々の生活は困難に直面していました。また、外交では遣唐使が派遣され、大陸から最新の文化や技術が流入しました。蝦夷との戦いも繰り返され、後の坂上田村麻呂による征討につながっていきます。

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続日本紀の意義

『続日本紀』は、単なる年代記ではなく、律令国家の理念と天皇の正統性を示す文書でした。同時に、当時の社会状況を知る第一級の史料でもあり、考古学や気候史研究の資料としても利用されています。とりわけ、仏教と政治の結びつきや、天変地異と政治を関連付ける記述は、日本古代の思想を理解する上で欠かせません。

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まとめ

『続日本紀』は、文武天皇から桓武天皇に至る94年間の奈良時代を描いた正史です。国家的事業として編纂され、天皇の事績だけでなく、災害・仏教・外交・蝦夷との戦いなどが記録されています。そこに描かれるのは、律令国家を完成させようとする中央の意志と、自然や社会の厳しい現実の交錯です。原文に触れることで、その緊張感と時代の息吹を今に感じ取ることができるでしょう。

 

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