日本の旧暦5月「皐月(さつき)」の意味と由来、キャラの名前や皐月賞の理由

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旧暦5月は「皐月(さつき)」と呼ばれ、早苗を植える季節の躍動と水の気配をその名に宿します。本記事では、まず旧暦=太陰太陽暦の仕組みと現行暦とのずれを整理し、皐月の語源(早苗月・「さ」の神の月・当て字としての「皐」)を丁寧に解説します。

つづいて、小満・芒種・夏至にまたがる季節感や御田植祭・端午といった行事をたどり、「五月」と「皐月」の使い分けを実例で示します。

さらに、なぜ「皐月/さつき」が人名・キャラクター名として好まれるのか、音・字面・連想(花のサツキ)から読み解き、競馬のクラシック「皐月賞」命名の背景も紹介します。

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旧暦とは?月齢で進み、節気で季節を調える暦

日本の旧暦は、月の満ち欠け(朔望)を基準に月日を数える太陰太陽暦です。新月が一日となり、一か月は二十九日または三十日で終わります。季節とのずれは二十四節気と閏月の挿入で補正されるため、旧暦の五月は現行の太陽暦五月と必ずしも一致しません。多くの年で概ね五月下旬から六月下旬に相当し、史料や年中行事を読む際は、その年の新月日と節気の入り(小満・芒種・夏至のいずれか)を確かめることが大切です。

観点 太陽暦(現在) 旧暦(太陰太陽暦)
月の始まり 毎月一日固定 新月=一日
月の長さ 30・31日(2月は28/29) 29日または30日
季節調整 不要 二十四節気+閏月
旧暦五月の体感 5月全体 多くは5月下旬〜6月下旬

旧暦の月の呼び方一覧表

現在の月 旧暦の月 読み方 意味・由来
1月 睦月 むつき 「親しい人々が集まり睦み合う月」から。正月の団らんが由来。
2月 如月 きさらぎ 「衣更着(きさらぎ)」が転じたもの。寒さで衣をさらに重ねる季節。
3月 弥生 やよい 「弥(いや)」は「ますます」、「生(おい)」は「生い茂る」の意味。春の芽吹き。
4月 卯月 うづき 卯の花(ウツギ)が咲く季節。卯の花は春の訪れを象徴する白い花。
5月 皐月 さつき 「早苗月(さなえづき)」が略されたもの。田植えの季節。
6月 水無月 みなづき 「水の無い月」と書くが、梅雨明け後で水が涸れる意味とも。実際には田に水を張る月ともされる。
7月 文月 ふみづき 七夕にちなんで「文(ふみ)」をやり取りする月。または「穂含月(ほふみづき)」からとも。
8月 葉月 はづき 木の葉が落ち始める「葉落ち月」が転じたもの。秋の気配が漂う頃。
9月 長月 ながつき 「夜長月(よながづき)」が略されたもの。秋の夜長を感じる季節。
10月 神無月 かんなづき 全国の神々が出雲大社に集まるため「神がいない月」とされる。出雲では「神在月(かみありづき)」と呼ぶ。
11月 霜月 しもつき 霜が降り始める季節であることから。寒さが本格化する頃。
12月 師走 しわす 「師(僧侶)も走るほど忙しい月」という説が有名。年末の慌ただしさを表現。

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「皐月(さつき)」の語源と表記

皐月は、田植えが本格化する時期に由来する月名です。もっとも広く行われる説明は「早苗月(さなえづき)」が縮まって「さつき」となったというもので、苗代から田への移行が始まる季節感をよく表します。民俗語源では、田の神に結びつく「さ(稲の霊)」の働きが強まる月という連想も語られてきました。漢字「皐」は本来「川辺の高い洲・堤」を指す字で、日本では音と季節感に合わせた当て字として「皐月」が定着しました。結果として、皐月という語は「水辺の働き(田植え)」と「田の神を迎える時期」という二つのイメージを重ねています。

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旧暦五月に重なる節気と年中行事

旧暦五月には多くの年で小満や芒種、さらには夏至が入ります。田の水が満ち、穂の芒(のぎ)を持つイネ科の作に適う雨が求められる時節です。社寺では御田植祭や早苗饗(さなぶり)が営まれ、里では端午の節供(旧暦五月五日)を中心に、邪気を祓い、子の成長と五穀の充実を祈る習俗が濃くなります。現行暦の五月五日は新暦の端午ですが、旧暦の端午は年により六月頃になる点は押さえておきたいところです。

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「五月」と「皐月」の使い分け

現代日本語では、単なる月次の表示は「五月」を用います。一方で、歳時・伝統・美称として季節感を込めたいときには「皐月」を選びます。時候の挨拶で「皐月の候」と書けば初夏の風趣が立ち上がり、書名・商品名・店舗名などでも古典味と清新さを同時に伝えられます。

項目 五月 皐月
用途 日付・事務・一般表記 歳時・美称・名称・時候語
ニュアンス 中立・実務的 伝統・季節感・端正
五月三日、五月病 皐月の候、皐月の風、皐月盆栽

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人名・キャラ名に「皐月/さつき」が選ばれる理由

「さつき」は柔らかな音と端正な字面をもち、吉意が明瞭です。春から初夏への移りを告げる語として、成長・清新・健やかさといった価値を自然に帯びます。植物名のサツキ(サツキツツジ)が旧暦五月頃に咲くことから、花のイメージも重なります。

創作のキャラクター名では、季節を一語で喚起でき、連作では旧月名(睦月・如月・弥生・皐月…)を並べて世界観の連続性を演出できます。凛とした強さを担わせたい場合は「皐月」、素朴で温かな印象を狙う場合は平仮名の「さつき」といった使い分けも効果的です。

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競馬の「皐月賞」はなぜその名か

皐月賞は三歳馬の春の大一番として知られるレースで、日本の三冠競走の第一関門に位置づけられています。開催時期が春であること、そして旧暦の「皐月」が象徴する若さの充実や稲作の始動というニュアンスが、三歳馬の完成度を測る競走の趣旨とよく響き合うため、雅名としての「皐月」が採られました。

以後、東京優駿(日本ダービー)、菊花賞へ連なる「春→盛夏→秋」という時間意識が、三冠路線の名称にも息づいています。

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旧暦と現行暦の「皐月」対応の目安

実務や史料読解の見取り図として、重なりの目安を示します(正確には当年の朔日と節気入りをご確認ください)。

旧暦の月 現在暦での目安 入りやすい節気
皐月(5月) 5月下旬〜6月下旬 小満・芒種・夏至

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歴史資料に見る皐月の景色

公家・武家の日記や社寺縁起に現れる「皐月」は、田植えへの移行、梅雨入り前の祈雨、端午の祓いといった記事と並んで現れます。川筋の水運が活発になるのもこの頃で、各地の風物記は「水」と「稲」と「祓い」をめぐる季節意識を、皐月という一語に凝縮しました。古典和歌で「さつき」は流水・白雨・杜若と取り合わせられ、初夏の明澄な気配を描き出します。

まとめ

皐月は、早苗を植える季節に通う日本人の時間感覚をとどめた月名です。旧暦五月は小満・芒種・夏至と重なり、水と緑が満ちて働きの気配が濃くなる時節です。「五月」と「皐月」を場面に応じて使い分ければ、実務と雅味の両立が図れます。人名・キャラ名としては、清新・成長・凛とした端正さを一語で喚起でき、競馬の「皐月賞」も春の充実を象徴する名として定着しました。旧暦と現行暦のずれを意識しつつ、皐月という古名に宿る季節の厚みを読み直すことが、歴史と文化への理解をいっそう豊かにしてくれます。

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