
3月に入ると「そろそろお彼岸だからお墓参りに行かないと」という声が聞こえてきます。春のお彼岸は、日本人の暮らしの中に深く根付いた先祖供養の期間です。
ただ、「お彼岸がいつからいつまでか」「法要って何をするのか」「お墓参りに決まった作法はあるのか」といった点を、改めて確認したいという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、春彼岸の日程・意味・法要の内容・お墓参りの作法・お供えのマナーまで、お彼岸にまつわる基本をまとめて解説します。
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2025年〜2030年の春彼岸の日程一覧
春彼岸は、春分の日を中日(ちゅうにち)として、前後3日ずつを合わせた7日間です。最初の日を「彼岸入り」、最終日を「彼岸明け」と呼びます。
| 年 | 彼岸入り | 中日(春分の日) | 彼岸明け |
|---|---|---|---|
| 2025年(令和7年) | 3月17日(月) | 3月20日(木・祝) | 3月23日(日) |
| 2026年(令和8年) | 3月17日(火) | 3月20日(金・祝) | 3月23日(月) |
| 2027年(令和9年) | 3月18日(木) | 3月21日(日・祝) | 3月24日(水) |
| 2028年(令和10年) | 3月17日(土) | 3月20日(月・祝) | 3月23日(木) |
| 2029年(令和11年) | 3月17日(日) | 3月20日(火・祝) | 3月23日(金) |
| 2030年(令和12年) | 3月17日(月) | 3月20日(水・祝) | 3月23日(土) |
お墓参りや法要は、彼岸の期間中であればいつ行っても問題ありません。ただ、この世とあの世が最も近づくとされる中日(春分の日)がお参りに最もふさわしい日とされています。
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春彼岸の「彼岸入り・中日・彼岸明け」それぞれの意味
7日間のお彼岸には、日ごとに異なる意味合いがあります。
彼岸入り(初日)
お彼岸が始まる日です。この日から先祖の霊があの世とこの世の境を越えてこちら側に近づいてくると考えられています。仏壇を丁寧に掃除し、お供えを整えることから始めるのが一般的です。
中日(春分の日)
太陽が真東から昇り、真西へと沈む日。浄土思想では極楽浄土は真西にあるとされており、この日が現世と浄土の距離が最も近くなる日とされています。法要やお墓参りは中日に行うのが最もふさわしいとされます。
彼岸明け(最終日)
お彼岸の締めくくりの日です。先祖の霊が再びあの世へと戻っていく日とされており、仏壇のお供えを下げ、感謝の気持ちとともにお彼岸を締めくくります。
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なぜ春分の日がお彼岸の中日なのか
春分の日と秋分の日がお彼岸の中日に定められているのには、明確な理由があります。
浄土思想では、阿弥陀仏の極楽浄土は西の方角の遥か彼方にあるとされています。春分・秋分の日は太陽が真東から昇り、真西に沈む日です。真西に向かって太陽が沈んでいくこの日に西方浄土を思い念仏を唱える修行(日想観・にっそうかん)が行われてきました。
また春分・秋分の日は昼と夜の長さがほぼ同じになる日でもあります。陰陽が均衡を保つこの日は、現世(此岸)とあの世(彼岸)の境界が薄くなり、先祖の霊とつながりやすくなる日と信じられてきました。
さらに春彼岸の根底には、日本古来の太陽信仰があります。春分の日を境に昼が長くなり、太陽の力が増していく——農耕民族である日本人にとって春の訪れは命の再生そのものであり、その転換点に先祖を思う日が重なることは、自然な信仰の形でもありました。
詳しくは「国民の祝日「春分の日」春彼岸の中日、3月20日か21日の意味とやること」の記事もご覧ください。
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春彼岸の法要とは——彼岸会(ひがんえ)
お彼岸の期間中、多くの寺院では「彼岸会(ひがんえ)」と呼ばれる法要が営まれます。
彼岸会は、僧侶による読経をもって先祖の供養と、参列者自身の仏道修行の場とする法要です。檀家やお寺の墓地にお墓を持っている家の人が寺院に集まり、先祖を供養します。
彼岸会の流れ
一般的な彼岸会の流れは以下の通りです。
- 受付・着席:開始時間の少し前に到着し、受付で記帳・香典を渡す
- 僧侶の入場・読経:住職による読経が行われる
- 焼香:参列者が順番に焼香を行う
- 法話:住職による仏教の教えや先祖供養についての話
- 閉式・墓参り:法要の後、参加者それぞれがお墓に参る
彼岸会は寺院によって中日のみ、または彼岸の期間中に複数回行うなど形式が異なります。菩提寺(ぼだいじ)がある方は事前に日程を確認しておくとよいでしょう。
初彼岸(はつひがん)について
家族が亡くなり、四十九日が明けた後に初めて迎えるお彼岸を「初彼岸」といいます。初彼岸で行うことは普段のお彼岸のご供養と変わりません。仏壇を掃除して故人が好きだった食べ物やお花、お水などを供えてお線香をあげます。
ただし初彼岸は故人が亡くなって最初のお彼岸であるため、親族が集まる機会になることも多く、菩提寺での法要を丁寧に行うことが一般的です。
法要のお布施の目安
彼岸会のお布施の金額は、寺院や地域によって異なりますが、一般的な目安として3,000円〜1万円程度とされています。初彼岸や特別に個別の法要をお願いする場合は1万円〜3万円程度が目安です。不安な場合は菩提寺に直接確認するのが一番確かです。
法要・彼岸会の服装
彼岸会への参列は、派手な服装を避け、地味な色合いの服装が基本です。正式な喪服を着用する必要はありませんが、黒・紺・グレーなど落ち着いた色のスーツや平服が適しています。
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春彼岸のお墓参り——時期・作法・持ち物
お墓参りはいつ行くか
春分の日や秋分の日にお墓参りに行くのがよいとされていますが、厳格に決まっているわけではありません。彼岸の7日間であればいつ行っても問題ありません。
一般的には、中日(春分の日)またはその前後が混雑するため、彼岸入りや彼岸明けの日に行く方もいます。午前中に行くのが丁寧とされていますが、時間帯も特に決まりはありません。
お墓参りの持ち物
お墓参りの際に持参するものは以下の通りです。
- 掃除道具:タオル・雑巾・ほうき・ごみ袋・水桶・柄杓(ひしゃく)
- お花:トゲや毒のあるもの、香りが強すぎるものは避ける。春彼岸には菊・スターチス・小菊などが定番
- 線香・ろうそく・ライター
- お供え物:ぼたもち・故人の好物・季節の果物など
- 数珠
お墓参りの手順と作法
①お寺の本堂に先に参拝する
菩提寺の墓地にお参りする場合は、最初にお寺の本堂に手を合わせてから墓地に向かうのが礼儀です。
②お墓の掃除
墓石の周辺の雑草・落ち葉を取り除き、墓石を水で丁寧に洗います。香炉・花立て・水鉢なども清めます。春のお彼岸は冬の間に溜まった汚れを落とす大切な機会でもあります。
③お供えを整える
花立てに新しい花を生け、水鉢に水を注ぎ、線香・ろうそくに火をつけます。お供え物は墓石の前に丁寧に置きます。
④合掌・礼拝
数珠を手に持ち、静かに合掌して先祖への感謝と供養の気持ちを伝えます。
⑤お供え物は持ち帰る
墓地にお供え物をした場合は、腐らせたりカラスなどの動物に荒らされるなどで墓地を汚す心配があるため、お墓へのお参りを終えるときに一緒に持ち帰るようにしましょう。
お墓参りの服装
法要に参列しない通常のお墓参りであれば、正装である必要はありません。墓地は公共の場ですので、露出の多い服や短パン、サンダルといったカジュアルすぎる服装はできるだけ避けるようにしましょう。清潔感があり、落ち着いた服装が適しています。
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春彼岸のお供え——ぼたもちの意味
春彼岸のお供えといえば「ぼたもち(牡丹餅)」です。
春のお彼岸にはこしあんのぼたもちを、秋のお彼岸にはつぶあんのおはぎを供える習慣があります。春彼岸の頃に咲く大きな「牡丹」の花、秋彼岸の頃に咲く「萩」の花にそれぞれ見立てたものです。
あんこの違いにも理由があります。春は小豆の収穫から時間が経ちているため皮が固くなり、なめらかなこしあんにする。秋は収穫したての新小豆を使えるため、皮ごとのつぶあんにする——という説があります。
小豆の赤は邪気を払う効果があることや、貴重な砂糖を使用したお菓子であることから、これらをお供えすることでご先祖様への感謝や家族円満を祈っていたといわれています。
お仏壇へのお供えのタイミング
お仏壇にお供えする際は、彼岸入り(初日)にお供えし、彼岸明け(最終日)に下げる形が基本です。日持ちしないお供え物を用意する場合は、お彼岸の中日を中心にお供えください。
ぼたもち以外にも、故人が好んだ食べ物や季節の果物をお供えすることに問題はありません。お供え物に特別なタブーはなく、気持ちを込めて選ぶことが大切です。
親戚へのお供えのし紙マナー
親戚や知人に彼岸のお供え物を渡す場合は、のし紙をつけるのが礼儀です。表書きは「御仏前」または「御供」とし、水引の下に自分の名前をフルネームで書きます。
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六波羅蜜——お彼岸本来の「修行」の意味
お彼岸は単なる先祖供養の期間にとどまらず、本来は仏教徒が修行を実践する7日間でもありました。
その修行の指針となるのが「六波羅蜜(ろくはらみつ)」です。六波羅蜜とは、悟りの境地(彼岸)に至るための6つの徳目を指します。
| 徳目 | 意味 |
|---|---|
| 布施(ふせ) | 見返りを求めず他者に施すこと |
| 持戒(じかい) | 戒律を守り、正しく生きること |
| 忍辱(にんにく) | 苦難や怒りに耐え、忍ぶこと |
| 精進(しょうじん) | 努力を怠らず、修行に励むこと |
| 禅定(ぜんじょう) | 心を静め、乱れのない状態を保つこと |
| 智慧(ちえ) | 物事の真理を見極める知恵を磨くこと |
こうした徳目は本来なら毎日心がけるべきなのですが、日頃は忙しくてなかなか実行できないのではないでしょうか。そこで、せめて春と秋、年に2回は実践しようというのが、お彼岸法要の意味です。
お墓参りをして先祖に向き合い、自分自身の日々の在り方を見つめ直す——お彼岸の7日間は、そのような内省の機会でもあります。
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お彼岸にやってはいけないこと・注意点
お彼岸に「土いじりはやってはいけない」は本当か
「お彼岸中は土いじりをしてはいけない」という話が伝わることがありますが、これは正確ではありません。土いじりは、お彼岸ではなく「春土用(はるどよう)」や「夏土用(なつどよう)」といった土用の期間に控えるべきとされています。土用期間中は「土公神(どくしん・どこうしん)」と呼ばれる土を司る神様が支配する期間であることから、土いじりや草刈りをはじめとして、地鎮祭や草むしりなど土を動かすことは控えるべきとする考えによるものです。
春彼岸の期間と春土用が重なることがあるため混同されやすいですが、お彼岸そのものに土いじりを禁ずる決まりはありません。
お彼岸とお盆の違い
お彼岸とお盆はともに先祖の霊を供養する期間ですが、性格が異なります。
お盆は先祖の霊がこの世に帰ってくる期間として、迎え火・送り火など「霊をお迎えし、お見送りする」行事を中心に行います。
お彼岸は先祖の霊のいるあの世(彼岸)に向かって、こちらから思いを届ける期間です。「霊を迎える」よりも「先祖に向き合い、自らの心を整える」という側面が強い行事です。
まとめ
- 春彼岸は春分の日を中日として前後3日ずつの7日間。彼岸入り・中日・彼岸明けの3つの節目がある
- 2026年の春彼岸は3月17日(火)〜3月23日(月)、中日は3月20日(金・祝)
- お彼岸の起源は日本古来の太陽信仰と祖先崇拝が、仏教の浄土思想と結びついた日本独自の行事
- 中日に太陽が真西に沈むことから、極楽浄土に最も近づく日とされ、お墓参りに最もふさわしい日とされている
- 彼岸会(法要)は菩提寺で行われ、読経・焼香・法話が中心。お布施の目安は3,000円〜1万円程度
- お墓参りはお寺の本堂に参拝してから。掃除→お供え→合掌の順で行い、お供え物は持ち帰る
- 春彼岸のお供えはぼたもち(牡丹餅)。彼岸入りにお供えし、彼岸明けに下げるのが基本
- 「土いじりがタブー」はお彼岸ではなく土用の期間の話。混同しないよう注意
- 六波羅蜜の実践という観点から、お彼岸は先祖供養とともに自らの在り方を見つめ直す7日間でもある
春のお彼岸は、寒さが和らぎ草花が芽吹き始めるこの季節に、先祖へ感謝を伝え、自分自身の日々の生き方を静かに振り返る日本人らしい時間です。





