
9月に入ると、日が少しずつ短くなり、朝晩の涼しさに秋の気配が漂い始めます。そのころ訪れるのが「秋のお彼岸」です。
「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉通り、秋彼岸は夏の暑さが和らぎ、季節が大きく転換する節目の時期でもあります。先祖に感謝を捧げ、自分自身の日々を振り返るこの7日間は、日本人の暮らしに静かに根付いてきた時間です。
この記事では、秋彼岸の日程・意味・法要・お墓参りの作法・おはぎをはじめとする行事食まで、秋のお彼岸にまつわることをまとめて解説します。
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2025年〜2030年 秋彼岸の日程一覧
秋彼岸は、秋分の日を中日(ちゅうにち)として前後3日ずつを合わせた7日間です。最初の日を「彼岸入り」、最終日を「彼岸明け」と呼びます。
| 年 | 彼岸入り | 中日(秋分の日) | 彼岸明け |
|---|---|---|---|
| 2025年(令和7年) | 9月20日(土) | 9月23日(火・祝) | 9月26日(金) |
| 2026年(令和8年) | 9月20日(日) | 9月23日(水・祝) | 9月26日(土) |
| 2027年(令和9年) | 9月20日(月) | 9月23日(木・祝) | 9月26日(日) |
| 2028年(令和10年) | 9月19日(水) | 9月22日(金・祝) | 9月25日(月) |
| 2029年(令和11年) | 9月20日(金) | 9月23日(月・祝) | 9月26日(木) |
| 2030年(令和12年) | 9月20日(土) | 9月23日(火・祝) | 9月26日(金) |
お墓参りや法要は、お彼岸の7日間であればいつでも問題ありません。ただし、この世とあの世が最も近づく中日(秋分の日)がお参りに最もふさわしい日とされています。
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2026年の秋彼岸はシルバーウィークと重なる
2026年の秋彼岸は、例年とは少し違う特別な年です。
2026年は、敬老の日(9月21日・月)・国民の休日(9月22日・火)・秋分の日(9月23日・水)が連続することで、「シルバーウィーク」が発生します。土日を合わせると9月19日(土)から9月23日(水)まで5連休となります。
シルバーウィークが発生するのは2015年以来11年ぶりのことです。帰省や旅行と合わせてお墓参りを計画しやすい年になりますが、お墓の混雑が予想されます。彼岸入りの9月20日(日)や中日の9月23日(水)は特に混みやすいため、時間に余裕を持って出かけると良いでしょう。
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「彼岸入り・中日・彼岸明け」それぞれの意味
7日間のお彼岸には、日ごとに異なる意味合いがあります。
彼岸入り(初日)
お彼岸の始まりの日です。先祖の霊があの世とこの世の境を越えてこちら側に近づいてくると考えられています。仏壇を丁寧に掃除し、おはぎや花を整えることから始めるのが一般的です。この日に合わせて菩提寺への連絡や、お墓掃除の段取りをしておくとよいでしょう。
中日(秋分の日)
太陽が真東から昇り、真西に沈む日。浄土思想では極楽浄土は真西の方角にあるとされており、太陽が真西に沈むこの日は、現世と浄土の距離が最も近づくとされています。法要やお墓参りは中日に行うのが最もふさわしいとされます。
彼岸明け(最終日)
お彼岸の締めくくりの日です。先祖の霊が再びあの世へと戻っていく日とされており、仏壇のお供えを下げ、感謝の気持ちとともに7日間を締めくくります。
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秋分の日と「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ日」
春分の日の祝日の意味が「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」であるのに対し、秋分の日は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ日」と祝日法で定められています。
この違いは、春と秋の季節感と深く結びついています。春は新たな命が芽吹き、自然の恵みが始まる季節。秋は収穫を終え、実りに感謝し、命の循環を思う季節です。実りをもたらした大地と先祖の恵みに感謝する——そうした日本人の季節感が、秋分の日の祝日の意味に反映されています。
宮中では秋分の日に「秋季皇霊祭(しゅうきこうれいさい)」が執り行われます。これは天皇が宮中の皇霊殿において、神武天皇をはじめとする歴代天皇・皇后・皇族すべての御霊をお祀りする大祭です。同日には「秋季神殿祭(しゅうきしんでんさい)」も行われ、天地の神々・八百万の神への感謝と国民の平安が祈られます。
秋分の日が単なる祝日ではなく、今もなお宮中で先祖と神々に向き合う日として続いていることは、この日の持つ歴史的な重みを示しています。
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秋彼岸のお墓参り——作法・持ち物・服装
いつお参りするか
お彼岸の7日間であればいつでも問題ありませんが、中日(秋分の日)が最もふさわしいとされます。午前中に行くのが丁寧とされていますが、時間帯に厳格な決まりはありません。
秋のお彼岸は残暑の時期にあたります。熱中症対策として、帽子・飲み物・タオルなどを準備したうえで、暑い時間帯を避けた早朝や夕方前を狙うのも実際的な選択肢です。
お墓参りの持ち物
- 掃除道具:タオル・雑巾・ほうき・ごみ袋・水桶・柄杓
- お花:秋彼岸には菊・リンドウ・彼岸花(お寺によっては持ち込み不可の場合も)・ケイトウなど秋の花が定番。トゲや毒のあるもの、香りが強すぎるものは避ける
- 線香・ろうそく・ライター
- お供え物:おはぎ・故人の好物・季節の果物など
- 数珠
- 虫除けスプレー・熱中症対策グッズ(秋とはいえ9月はまだ暑い日も多い)
お墓参りの手順
①本堂に先に参拝する
菩提寺の墓地にお参りする場合は、まず本堂に手を合わせてから墓地へ向かうのが礼儀です。
②お墓の掃除
墓石の周辺の雑草・落ち葉を取り除き、墓石を水で丁寧に洗います。香炉・花立て・水鉢なども清めます。夏の間に伸びた草や汚れを落とす、秋彼岸ならではの大切な作業です。
③お供えを整える
花立てに新しい花を生け、水鉢に水を注ぎ、線香・ろうそくに火をつけます。おはぎなどのお供え物を丁寧に置きます。
④合掌・礼拝
数珠を手に持ち、静かに合掌して先祖への感謝と供養の気持ちを伝えます。
⑤お供え物は持ち帰る
腐敗やカラス・動物による散乱を防ぐため、お供え物はお参りの後に持ち帰るのが基本です。
服装
通常のお墓参りであれば正装の必要はありません。露出の多い服や短パン・サンダルなど、カジュアルすぎる服装は避け、清潔感のある落ち着いた服装が適しています。
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秋彼岸の法要——彼岸会(ひがんえ)
お彼岸の期間中、多くの寺院では「彼岸会(ひがんえ)」と呼ばれる法要が営まれます。僧侶による読経のもと先祖の供養を行い、参列者自身が仏道修行を実践する場でもあります。
彼岸会の一般的な流れ
- 受付・着席:開始の少し前に到着し、受付で記帳・香典を渡す
- 僧侶の入場・読経:住職による読経
- 焼香:参列者が順に焼香を行う
- 法話:住職による仏教の教えや先祖供養についての話
- 閉式・墓参り:法要後にそれぞれのお墓へ参る
お布施の目安
彼岸会のお布施は寺院・地域によって異なりますが、一般的な目安は3,000円〜1万円程度です。個別の法要(初彼岸・年忌法要を合わせて行う場合など)では1万円〜3万円程度が目安になります。不安な場合は菩提寺に直接確認するのが確かです。
服装
彼岸会への参列は喪服の必要はありませんが、黒・紺・グレーなど落ち着いた色の服装が適しています。
初彼岸について
家族が亡くなり、四十九日が明けた後に初めて迎えるお彼岸を「初彼岸」といいます。通常のお彼岸の供養と基本的には変わりませんが、故人を最初にお迎えする彼岸として、親族が集まり菩提寺での丁寧な法要を行うことが一般的です。
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秋彼岸の行事食——おはぎ(お萩)の意味と由来
秋彼岸の行事食といえば「おはぎ(お萩)」です。
おはぎは、もち米を炊いてやや粗めについたものを小ぶりに丸め、あんこ・きなこ・ごまなどでくるんだ食べ物です。秋のお彼岸の頃に咲く「萩(はぎ)」の花に見立て、「お萩」と呼ばれるようになりました。
春のお彼岸には「ぼたもち(牡丹餅)」、秋のお彼岸には「おはぎ」と呼び名が変わりますが、作り方は基本的に同じです。
あんこの違い——つぶあんとこしあん
春のぼたもちは「こしあん」、秋のおはぎは「つぶあん」を使うとされています。この違いには理由があります。
小豆の収穫は秋です。秋彼岸の頃は収穫したての新小豆を使えるため、皮が柔らかく、皮ごとのつぶあんが美味しく作れます。一方、春は収穫から半年が経ち皮が固くなるため、皮を取り除いたなめらかなこしあんにする——という季節の知恵です。
ただし地域や家庭によって異なり、秋もこしあんを使うところも多くあります。
おはぎの種類
定番のあんこのほかに、きなこ・黒ごま・ずんだ(枝豆)・青のりなどをまぶしたものもあります。地域によってそれぞれに独自の名前がついていることもあり、秋彼岸の時期に各地の和菓子屋が競うように揃えます。
なぜおはぎをお供えするのか
小豆の赤い色は古来から邪気を払う力があると信じられてきました。神事や仏事に小豆を使った食べ物が供えられてきた背景には、この赤の持つ霊力への信仰があります。また砂糖が貴重だった時代、甘いお菓子を先祖に供えることは、最上の感謝の表現でもありました。
お仏壇へのお供えのタイミング
彼岸入り(初日)にお供えし、彼岸明け(最終日)に下げるのが基本です。おはぎは日持ちしないため、中日を中心にこまめに替えるか、1〜2日ごとに新しいものをお供えするとよいでしょう。
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秋彼岸とともに訪れる季節の行事
十五夜(中秋の名月)
秋彼岸の時期には、十五夜(中秋の名月)も重なることがあります。十五夜は旧暦の8月15日で、現代の暦では9月中旬〜10月上旬ごろにあたります。
月見団子・すすき・里芋などをお供えして月を愛でる十五夜の行事は、豊作への感謝と祈りを表すものでもあります。秋の実りに感謝するお彼岸の精神と深く重なる行事です。
敬老の日
9月の第3月曜日に定められた敬老の日は、秋彼岸の時期と重なります。先祖への感謝を捧げるお彼岸と、今を生きる年長者への敬意を表す敬老の日が近い時期に重なることは、9月という季節が命の継承と感謝を深く感じる時期であることを示しています。
前述の通り2026年は敬老の日・国民の休日・秋分の日が連続するシルバーウィークが発生します。祖父母や年長の親族と一緒にお墓参りに行く機会として、特別な一年になりそうです。
「暑さ寒さも彼岸まで」——秋彼岸が持つ季節の意味
「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉は、春と秋、両方のお彼岸を指します。
夏の暑さは秋彼岸の頃まで続き、秋彼岸を境に本格的な秋へと移り変わる——この言葉は、秋分の日が単なる暦の上の節目ではなく、日本人が体で感じてきた季節の転換点であることを示しています。
農耕を生業としてきた日本人にとって、夏の収穫が終わりに近づくこの時期は、大地と太陽の恵みへの感謝が自然と湧き上がる時でもありました。その感謝の気持ちが先祖供養の行事と重なり、今日のお彼岸の形になっていきました。
残暑がようやく和らぎ、虫の音が響き、夕暮れが早くなる——その静かな変化の中にこそ、秋彼岸の雰囲気があります。
春彼岸と秋彼岸の違い
同じお彼岸でも、春と秋では季節の意味合いが少し異なります。
| 春彼岸(春分の日) | 秋彼岸(秋分の日) | |
|---|---|---|
| 祝日の意味 | 自然をたたえ、生物をいつくしむ日 | 祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ日 |
| 宮中祭祀 | 春季皇霊祭・春季神殿祭 | 秋季皇霊祭・秋季神殿祭 |
| 季節の象徴 | 命の再生・新たな始まり | 実りへの感謝・命の循環 |
| 行事食 | ぼたもち(こしあん) | おはぎ(つぶあん) |
| お墓の花 | 菊・スターチス・小菊など | 菊・リンドウ・ケイトウなど |
春は命が芽吹く「始まり」の彼岸、秋は命が実る「感謝」の彼岸とも言えます。どちらも先祖と向き合う時間という本質は変わりませんが、その季節ならではの感覚とともに過ごすことで、お彼岸の意味がより深く感じられます。
春彼岸についての詳細は「3月、春のお彼岸はいつからいつまで?意味・法要・墓参り」の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
- 秋彼岸は秋分の日を中日として前後3日ずつの7日間。彼岸入り・中日・彼岸明けの3つの節目がある
- 2026年の秋彼岸は9月20日(日)〜9月26日(土)、中日は9月23日(水・祝)
- 2026年は11年ぶりのシルバーウィーク。敬老の日・国民の休日・秋分の日が連続し、最大5連休になる
- 秋分の日は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ日」。宮中では秋季皇霊祭・秋季神殿祭が執り行われる
- お墓参りは中日が最もふさわしいとされる。9月はまだ暑いため熱中症対策を忘れずに
- 秋彼岸の行事食はおはぎ(お萩)。収穫したての新小豆でつぶあんを作るのが秋ならでは
- 春のぼたもち(こしあん)との違いは、小豆の収穫時期に合わせた季節の知恵から来ている
- 「暑さ寒さも彼岸まで」——秋彼岸は夏の終わりと秋の始まりの転換点。実りへの感謝と先祖供養が重なる日本人らしい時間
秋のお彼岸は、夏の賑わいが落ち着き、静かな季節の深まりとともに訪れます。虫の音を聞きながら先祖に手を合わせ、自分の日々の在り方を静かに見つめ直す——そのような時間として、秋彼岸を過ごしていただければ幸いです。






