
神社に参拝する際、「氏神神社」と「崇敬神社」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。しかし、この二つの違いを正確に説明できる人は少ないかもしれません。氏神神社は地域と結びついた存在である一方、崇敬神社は個人の信仰心によって結ばれる神社です。本記事では、崇敬神社とは何かを軸に、氏神神社との違い、そして崇敬神社をどのように考え、選べばよいのかを、日本神話や歴史、日本文化の背景を踏まえて解説します。
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崇敬神社とは何か
崇敬神社とは、居住地や血縁とは直接関係なく、個人が特別な信仰心をもって敬い、参拝する神社を指します。
崇敬神社の読み方は「すうけいじんじゃ」です。
「崇敬」とは、深く敬い、心から尊ぶことを意味する言葉であり、崇敬神社は自らの意思によって信仰対象とする神社である点に特徴があります。
神道において信仰は本来、強制されるものではなく、自然や神との関係性を自発的に結ぶものとされてきました。そのため、崇敬神社という考え方は、近代以降に生まれた特別な制度というよりも、古くから存在していた個人的信仰の在り方を言語化したものといえます。
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氏神神社とはどのような神社か
氏神神社とは、一定の地域や共同体を守護する神を祀る神社のことです。もともとは日本では交通や運送もまだ整備されておらず、身分や家が重要視され、引っ越しはあまりしない文化だったので、その地域に住む人たちが家やその部落を守る神様をあがめていたのが氏神様の信仰の発端です。時代が進むにつれて、引っ越しをする人も増えてきたので、血縁から地縁へと性格が変化していきました。つまり、その地域に住む人たちが昔から大切にしてきた神様とその神社を、その地域に引っ越してきた人たちも一緒に氏神様として大切にしていきましょうということです。
近世以降は、住んでいる土地ごとに氏神神社が定まり、地域住民が共同で祭礼や行事を行う拠点となっています。
氏神神社への参拝は、個人の信仰というよりも、地域社会の一員としての務めや結びつきを確認する意味合いが強い点が特徴です。
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崇敬神社と氏神神社の違い
崇敬神社と氏神神社は、役割や成り立ちが異なります。以下の表は、両者の違いを整理したものです。
| 観点 | 崇敬神社 | 氏神神社 |
|---|---|---|
| 結びつき | 個人の信仰心 | 地域・共同体 |
| 選択の自由 | 自分で選ぶ | 居住地により定まる |
| 主な役割 | 精神的支え、人生観との結びつき | 地域守護、共同体の安定 |
| 歴史的背景 | 個人的信仰の積み重ね | 氏族・村落の守護神信仰 |
このように、どちらが重要というものではなく、性質の異なる信仰の形として併存しています。
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崇敬神社は複数あってもよいのか
崇敬神社は一社に限る必要はありません。日本の神観念は多神的であり、状況や願いに応じて複数の神と関係を結ぶことが自然とされてきました。学問、仕事、家族、人生の節目など、それぞれの局面で縁を感じた神社を崇敬することは、神道的にも不自然な行為ではありません。
重要なのは数ではなく、神社や神に対して敬意を持ち、誠実な気持ちで向き合うことだといえるでしょう。
崇敬神社からもお札をもらい御札が複数ある場合の神棚への祀り方
崇敬神社からも御札を受け、神棚に複数の御札がある場合でも、神道的に問題はありません。日本の信仰は多神的であり、複数の神を同時に祀ることは古くから行われてきました。

神社本庁が示す神棚の基本的な考え方では、最優先されるのは神宮大麻(伊勢の神宮のお札)です。天照大御神は皇室・国土・国民全体の祖神と位置づけられており、特定の地域や個人を超えた存在であるため、中央に祀るのが原則とされています。
そのうえで、
向かって右側(神様から見て左)に氏神神社、
向かって左側(神様から見て右)に崇敬神社
という配置が、三社造り神棚における一般的な形です。
崇敬神社などにお参りをして受けたお札が複数ある場合は、崇敬神社のお札の後ろに重ねてお納めするとよいと神社本庁のホームページで紹介されています。
三社造り
三社造りの宮形では、中央に日本人の総氏神さまである伊勢神宮のお神札(神宮大麻)を、向かって右に地元の氏神さまのお神札を、向かって左に崇敬している神社のお神札をお納めします。
その他に、神社におまいりをされた際に受けたお神札は、向かって左におまつりした崇敬神社のお神札の後ろに重ねてお納めするとよいでしょう。
崇敬神社が多いと神様同士が喧嘩するという話は本当なのか
崇敬神社が多いと神様同士が喧嘩する、という話に根拠はありません。これは神道の教えというより、後世に生まれた俗説や誤解と考えられています。
日本の神観念は本来多神的であり、一つの場所に複数の神を祀ることは古くから行われてきました。神社そのものも、多くが複数の神を合祀していますし、天孫系の天津神、出雲系の国津神も含めて、摂社や末社として境内に複数の神様をお祀りしている神社も多くあります。
神々は人間のように感情的に争う存在ではなく、それぞれの役割や性格をもって世界を支える存在とされています。大切なのは神の数ではなく、敬意と感謝をもって向き合う姿勢です。崇敬神社が多いこと自体は問題ではなく、信仰心をもって丁寧に祀ることこそが神道的に重視される考え方だといえるでしょう。
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崇敬神社の決め方を考える
崇敬神社の決め方に、明確な規則や正解はありません。歴史的にも、人々は生まれ育った土地を離れた後、仕事や人生の転機を通じて新たな神社との縁を感じてきました。
たとえば、特定の神話に強く心を惹かれた場合、その神を祀る神社を崇敬することは自然な流れです。また、参拝した際に心が落ち着く、長年お世話になっていると感じるといった感覚も、崇敬の重要な要素とされています。理屈よりも、自分の人生や価値観とどのように響き合うかを大切にする姿勢が、日本文化における崇敬神社の在り方といえるでしょう。
引っ越し後の氏神神社の考え方
引っ越し後の氏神神社の考え方は、「切り替え」と「感謝」を軸に考えると分かりやすくなります。氏神様は、住んでいる土地と人の暮らしを守る存在であるため、引っ越しをすると氏神様も自然に変わります。これは縁が切れるという意味ではなく、その土地での役目が一区切りつくと捉えるのが神道的な考え方です。
引っ越す前の氏神様に対しては、これまで無事に暮らせたことへの感謝を伝える参拝を行うのが望ましいとされています。特別な儀式は必要なく、「お世話になりました」と心の中で伝えるだけでも十分です。御札を受けていた場合は、神社に返納するか、感謝の気持ちを込めて適切に納めます。
引っ越し後は、新しい土地の氏神神社に参拝し、住み始めたことの報告と挨拶をします。お願いごとよりも、「この地で暮らしますのでお守りください」と伝える姿勢が大切です。氏神様との関係は土地ごとに結ばれるものであり、前後の氏神様が対立することはありません。感謝と敬意をもって接することが、引っ越し後の氏神信仰の基本といえるでしょう。
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氏神神社と崇敬神社の両立
多くの人は、居住地の氏神神社に参拝しつつ、別に崇敬神社を持っています。これは矛盾するものではなく、地域社会との結びつきと、個人の精神的支えをそれぞれ大切にしている状態です。
氏神神社は「今ここで生きる場所」とのつながりを示し、崇敬神社は「自分自身の生き方や信念」とのつながりを示す存在と考えると理解しやすいでしょう。崇敬という言葉の通り、神様の信念やご神徳が自分の理想であったり、生きる上での指針になるような神様を崇敬神社として大切にしていくと良いと思います。神社に祀られている神様は、多くの神様が日本神話の中でどのような役割を果たされたのか、どのようなお立場だったのかなどが古事記や日本書紀などに記されて残っています。それぞれの神社にもご由緒として、その神社の神様や神社の創設にどのような歴史があるのかなどが記されているので参考にすると奥深く日本の神道の本質的な意味を知ることができるのではないでしょうか。
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現代における崇敬神社の意味
現代社会では、人の移動が増え、地域共同体との結びつきが希薄になりがちです。その一方で、崇敬神社という考え方は、個人が自らの価値観や人生観を見つめ直す拠り所として、改めて意味を持ち始めています。
崇敬神社とは、願いを叶えてもらうためだけの存在ではなく、自分がどのように生きたいかを静かに問いかけてくれる場所でもあります。氏神神社との違いを理解したうえで崇敬神社を考えることは、日本文化における信仰の多層性を知ることにもつながるでしょう。











