付喪神・九十九神(つくもがみ)とは?

付喪神(つくもがみ)とは、日本の民間信仰や妖怪伝説に登場する、長い年月を経て魂が宿った道具や器物が神格化または妖怪化した存在です。この概念は、100年以上使われた物に霊的な力が宿るという信仰に基づいており、古くから日本文化に深く根付いています。付喪神は、神として崇められることもあれば、妖怪として人々を驚かせたり、いたずらをする存在としても描かれます。この記事では、付喪神の意味や歴史、信仰の背景、そして現代における位置づけについて詳しく解説します。

つくもがみ(付喪神・九十九神)とは

つくもがみ(付喪神・九十九神)は、日本の民間信仰や妖怪伝説に登場する神々や妖怪であり、長い年月を経た道具や器物が霊的な存在として覚醒し、独自の意志や力を持つようになったものを指します。具体的には、100年を経過した器物が神格を持ち、付喪神としての特質を獲得すると信じられています。この概念は、日本のアニミズム(万物に魂が宿るとする信仰)や神道の信仰に深く根ざしており、古くから人々の生活や文化に影響を与えています。

付喪神の意味

付喪神の「付喪」とは、「付く(つく)」と「喪(も)」が合わさった言葉であり、古い物に霊魂が付くことを意味します。長い間使用され、愛着を持って使われてきた物には魂が宿り、それがやがて神格化すると考えられています。これには、日本のアニミズム的な信仰が大きく影響しています。

付喪神は神様?妖怪?

付喪神(つくもがみ)は、長い年月を経て魂が宿った道具や器物が神格化または妖怪化した存在です。古くから日本の民間信仰において、100年以上使われた物が霊的な力を持つと信じられています。付喪神は、一方では神として敬われることもありますが、他方では人々を驚かせたり、いたずらをする妖怪としても描かれます。このため、付喪神は神と妖怪の両方の性質を持つ存在と言えます。具体的には、古い物に対する敬意と恐れが混在し、それが付喪神という形で表現されています。物の魂や霊的存在を認めるアニミズム的な信仰が根底にあります。

付喪神が神様として扱われているか妖怪として捉えられているかについては、日本の文学や歴史書でもどちらもあります。

付喪神という言葉が登場する歴史的な書物の例一覧

付喪神という概念は、古くから日本の文学や歴史書に登場します。以下に、付喪神が言及されている主要な歴史的書物をいくつか紹介します。

『百鬼夜行絵巻』

『百鬼夜行絵巻』は、付喪神を含むさまざまな妖怪を描いた絵巻物で、室町時代から江戸時代にかけて作られました。これらの絵巻には、道具や器物が妖怪化した付喪神の姿が多く描かれており、当時の人々の妖怪観や信仰を知る手がかりとなります。

『今昔物語集』

『今昔物語集』は、平安時代末期に成立した説話集で、日本、中国、インドのさまざまな物語が収録されています。その中には、道具や器物が長年使用された後に付喪神として覚醒する話も含まれており、古くから付喪神の概念が存在していたことがわかります。

『徒然草』

『徒然草』は、鎌倉時代末期に吉田兼好によって書かれた随筆集で、付喪神に関する記述も見られます。特に、長年使用された道具に魂が宿るという考え方が述べられており、当時の人々の信仰や文化を理解する上で重要な資料となります。

『神道集』

『神道集』は、鎌倉時代末期に成立した神道の教義や儀礼をまとめた書物で、付喪神に関する記述が含まれています。ここでは、古い物に神が宿るという信仰が詳細に説明されており、付喪神がどのように崇拝されていたかを知ることができます。

付喪神が実在すると信じられてきた背景・現在

付喪神が実在すると信じられてきた背景には、日本のアニミズム的な信仰が大きく影響しています。日本では、自然や物に魂が宿るとする信仰が古くから根付いており、長年使われた道具や器物にも霊的な存在が宿ると考えられてきました。特に、生活に密着した道具や器物には特別な思い入れがあり、それが神格化するという信仰は広く受け入れられていました。

現代における付喪神の信仰も、古い物に対する敬意や感謝の念が根底にあります。現在でも、古い物を大切にし、それに感謝するという文化は続いており、リサイクルや再利用の精神にもつながっています。付喪神は、現代の日本文化やエコロジーの観点からも再評価されています。

「供養する」という考え方は付喪神の存在と関連している

日本人は、大切にしてきた人や物に対して、「供養する」という感覚を持っており、実際に供養することを行います。供養することには仏教的な要素も強くありますが、八百万のものに神々が宿っているという考え方も根底にあり、人間同様にものにも神や精神が宿っている尊い存在であることを無意識に持っているのです。

すべてのものに精神が宿っているからこそ、今まで自分が大切にしてたものや、子供の成長を祈って飾っていたひな人形や五月人形、小さいころから大切にしてきたぬいぐるみなどもただ単にごみとして廃棄ことは心苦しく感じ、神社で お清めをしてからお焚き上げしてもらうことなどが風習となっています。付喪神という呼び方は現代ではあまりしませんが、ものや人や自然など、存在するすべてのものを大切にしてきた日本ならではの感覚です。

付喪神という神様は神社に祀られている?どこにいる?

付喪神は特定の神社に祀られているわけではありませんが、古い物や道具に感謝を捧げる祭りや儀式が各地で行われています。例えば、以下のような神社や行事があります。

京都の北野天満宮

北野天満宮では、使い古した針に感謝する「針供養」が行われています。この行事は、針が長年の使用で魂を宿すとされ、その労をねぎらうためのものです。付喪神に対する感謝の念が込められています。

浅草の浅草寺

浅草寺では、古い人形を供養する「人形供養」が行われています。これは、使い古された人形が付喪神として覚醒するという考えに基づき、人形に感謝し、供養する儀式です。

東京の水天宮

水天宮では、古い着物を供養する「着物供養」が行われています。着物が長年使用され、魂を宿すとされ、それに感謝し供養するための儀式です。

これらの行事や儀式は、八百万のものに神々が宿っているという考え方も根底にあり、人間同様にものにも神や精神が宿っている尊い存在であることや、付喪神の信仰が現代においても続いていることを示しています。

付喪神についての海外の反応

海外における付喪神の概念は、日本のアニミズム的な信仰や文化に対する興味を引きつけています。特に、日本のアニメやマンガ、映画などを通じて、付喪神の存在が広く知られるようになりました。例えば、スタジオジブリの映画『千と千尋の神隠し』や『もののけ姫』には、付喪神的な存在が登場し、これが海外の観客にも強い印象を与えました。

また、現代の大量生産・大量消費・大量廃棄という風潮の中で、環境保護やサステナビリティの観点からも、ものを大切にする、日本人の「もったいない」の精神、そして付喪神の概念は再評価されています。古い物やずっと使ってきて愛着がわくものに対する敬意や感謝の念は、物を大切にし、再利用する精神と共通しており、エコロジー運動と結びついています。

まとめ

付喪神(つくもがみ)は、日本の民間信仰や妖怪伝説において、長年使用された道具や器物が神格化した存在です。古くから日本の文化や信仰に深く根ざし、さまざまな歴史的書物に記述されています。現代においても、古い物に対する敬意や感謝の念を通じて、付喪神の信仰は続いています。特定の神社に祀られているわけではありませんが、各地で行われる供養の儀式や行事は、付喪神の信仰が現代でも大切にされていることを示しています。また、海外でも日本のアニミズム的な信仰や文化に対する興味から、付喪神の概念が広く受け入れられています。付喪神は、物を大切にし、再利用する精神とも結びつき、現代の環境保護の観点からも重要な意義を持っています。