神議りとは?(かむはかり)神様たちが議論する意味、いつ行われるか

日本神話において、神々が集まり世の中の秩序や人々の運命について話し合う神聖な会議が「神議り(かむはかり)」です。特に有名なのが、旧暦10月(神無月)に出雲大社で行われる神々の会議で、ここでは縁結び、五穀豊穣、社会の安寧などが議論されるとされています。この神議りは、古代から続く日本の信仰や文化に深く根付き、現代でも神事や祈願の背景に影響を与えています。本記事では、神議りの意味や役割、出雲大社での開催時期、日本神話に登場する神々の議論の場面について詳しく解説します。

神議り(かむはかり)とは?

神議り(かむはかり)とは、神々が集まり、神聖な議論を行うことを指します。これは、日本神話や神道の世界観に基づいた概念であり、特に旧暦10月(神無月)に出雲大社で行われる神々の会議として知られています。

この神議りでは、人々の縁(えにし)、五穀豊穣、自然の調和、社会の秩序などについて、神々が相談し、決定を下すと考えられています。特に、出雲大社に祀られる大国主命(おおくにぬしのみこと)が主宰する重要な会議であり、全国の神々が集まる神事の一環とされています。

神議りの意味と役割

神議りは、神々が世の中の秩序を定め、人間社会の安寧や繁栄を導くための重要な議論とされています。神議りということを自然と受け入れられる世界観はおそらく日本独特であり、世界的にも珍しいと考えられます。一神教の世界観では、全知全能の神が独断で様々なことを決定して教えとして導いているのに対し、八百万の神様がいるという日本の神道では、目に見えない世界でいろいろな神様が相談をしあって、顕界にいる人々の平和や幸せを考えてくださっているという意味です。八百万の神様たちは、神様ごとにご神徳が異なっており、それぞれの立場をもちながらも意見を持ち合って議論をして目に見える世界の平和やバランスをとってくださっているということです。神議りは、他者の意見や立場を尊重しつつも、みんなで協力し支え合う、日本の文化の根底にある価値観を象徴するようなものです。

縁結び(えにしむすび)の決定

神議りの中でも特に有名なのが縁結びに関する議論です。出雲大社は縁結びの神として信仰されており、この神議りの場で、翌年の人々の出会いや結婚、友人関係、仕事のご縁などが決められると伝えられています。

五穀豊穣と自然の調和

神々は、農作物の収穫、気候の巡り、土地の豊かさなどについて話し合い、次の年の五穀豊穣を願うとされます。これは、稲作を中心とした日本の農耕文化と密接に結びついた信仰です。

社会の安寧と秩序

国や地域の平和、家族や共同体の繁栄についても神々が協議を行うとされ、神議りを通じて、日本の国全体が神々の加護を受けるという考え方が根付いています。

人間の運命と試練

個々の人々の運命についても神々が決めるとされ、良縁だけでなく、試練や学びの機会についても神議りの中で決定されると言われています。

神議りはいつ行われるのか?

神無月(旧暦10月)に出雲で開催

神議りは、旧暦10月に出雲大社で行われるとされています。 旧暦10月は全国の神々が出雲に集まるため、各地の神社では神々が留守になることから「神無月(かんなづき)」と呼ばれます。一方、神々が集まる出雲地方では、「神在月(かみありづき)」と称され、この時期に神議りが行われるのです。

神在祭(かみありさい)と神迎祭(かみむかえさい)

神々が出雲大社に集まる際、以下のような神事が執り行われます。

神迎祭(かみむかえさい)

全国の神々が海を渡って出雲に到着するとされる夜に、稲佐の浜で神々を迎える神事が行われます。

神在祭(かみありさい)

神々が出雲大社の十九社(じゅうくしゃ)に滞在し、神議りを行う期間。神々は、人間の運命や縁を決める重要な話し合いを行います。

他の神議りの時期

神議りは出雲大社だけでなく、日本神話に登場する他の場面でも見られます。例えば、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸に隠れた際の神々の相談も神議りの一つと考えられます。このように、日本神話の中で神々が集まり重要な決定を下す場面は多くあり、そのたびに神議りが行われていたと考えられます。

日本神話における神議りの例

神議りは、神話の中で重要な役割を果たしてきました。以下に代表的な神議りの場面を紹介します。

天岩戸神話(あまのいわと)

天照大神が天の岩戸に隠れた際、八百万(やおよろず)の神々が集まり、どうすれば再び世の中に光を取り戻せるかを話し合ったのが神議りの一例です。この結果、天宇受売命(あめのうずめのみこと)の舞や、手力男命(たぢからおのみこと)の力によって、天照大神が岩戸から出てきました。

国譲り神話

国譲り神話では、天照大御神の使者たちが大国主命と交渉を行う場面があり、これもまた神議りの一種と考えられます。結果として、大国主命は顕界(現実世界)の統治権を譲り、幽界(目に見えない世界)の支配を担当することになりました。

まとめ

神議り(かむはかり)とは、神々が集まり、世の中の秩序や人々の運命について話し合う神聖な会議です。特に旧暦10月に出雲大社で行われる神議りは、人々の縁や五穀豊穣、社会の安寧を決める重要なものとされています。

神議りは、単なる神話の中の出来事ではなく、日本の信仰や文化に深く根付いている概念です。現代でも、縁結びの祈願や五穀豊穣の願いは続いており、神々の意志を尊重する考え方は今なお生きています。神議りを知ることで、私たちの運命や縁の背景に、神々の働きがあるという信仰の深さを感じることができるでしょう。