「三国志」とは?中国の三国時代に編纂された歴史書

『三国志』は、中国の三国時代(220年 - 280年)を記録した歴史書で、魏・蜀・呉の三国が繰り広げた政治や軍事、人物に関する詳細な記録が残されています。晋の歴史家、陳寿(ちんじゅ)によって編纂され、魏書、蜀書、呉書の三部構成となっています。『三国志』は、当時の中国の政治状況を理解する上で重要な史料であり、後世の文学や芸術にも多大な影響を与えています。

『三国志』の編纂者と背景

『三国志』は、中国が晋(しん)の時代に、歴史家の陳寿(ちんじゅ)によって編纂されました。陳寿は、蜀の出身であり、晋の宮廷に仕えながら歴史書を編纂する役目を担っていました。彼は、三国時代における魏・蜀・呉の出来事を公平に記述するため、多くの史料や記録を基に、220年から280年にかけての歴史をまとめ上げました。

三国時代は、漢王朝が崩壊し、魏・蜀・呉の三国が対立しながらもそれぞれ独立した王朝として力を保っていた時代です。戦乱が続いたこの時期は、中国全土に混乱をもたらしましたが、後の中国文化や思想に深く影響を与えました。

三国時代(220年 - 280年)の時、日本は何時代?

三国時代(220年 - 280年)の時期、日本は弥生時代後期にあたります。弥生時代は、紀元前3世紀頃から紀元3世紀頃まで続いたとされ、日本列島で稲作農業が本格的に広まった時代です。

特に、中国の三国時代に相当する弥生時代後期は、日本における初期の社会的・政治的組織が発展した時期であり、邪馬台国や卑弥呼が登場する時代とも一致します。この時期に、日本は魏と外交関係を持ち、中国の歴史書『三国志』に記されることになります。

『三国志』の構成

『三国志』は、魏の国に関する記録をまとめた「魏書」、蜀に関する「蜀書」、呉に関する「呉書」の三部構成となっています。

魏書

曹操(そうそう)を中心に、魏王朝の成り立ちや政治、軍事、人物の活躍が記録されています。魏が三国時代で最も強力であり、陳寿が仕えていた晋の前身であったため、比較的詳細な記述がなされています。

三国志の魏書の一部「魏志倭人伝」

魏志倭人伝は、その中の魏書の一部で、倭国(日本)について記された記録です。具体的には、魏書の「東夷伝倭人条」に倭国についての記述があり、3世紀頃に邪馬台国を統治していた女王卑弥呼や倭国の文化、社会、魏との外交関係などが詳述されています。

要するに、『三国志』の中に魏志倭人伝が含まれているため、魏志倭人伝は『三国志』の一部であり、魏書に属する章であるという関係です。

蜀書

劉備(りゅうび)を中心とした蜀漢の歴史を描いています。義兄弟として知られる関羽(かんう)や張飛(ちょうひ)など、人気のある英雄たちが活躍する場面も多く登場します。特に、諸葛亮(しょかつりょう)や彼の知恵により蜀漢の勢力が一時期強まったことが記述されています。

呉書

孫権(そんけん)を中心とする呉の歴史を扱います。呉は南方に位置し、長江を利用して勢力を保ちました。呉の海上交易や、戦略的な防衛策などが描かれています。

『三国志』の歴史的意義

『三国志』は、三国時代の政治・軍事・社会の動向を記録した貴重な歴史書であり、中国史の中でも非常に重要な位置を占めています。特に、三国志を通じて登場する多くの英雄や知将たちは、中国文化の中で神格化され、後世に語り継がれてきました。

また、三国時代は、国家分裂と統一の歴史を象徴する時期であり、後の中国の政治思想や軍事理論にも大きな影響を与えました。『三国志』の物語は、ただの歴史的記録にとどまらず、中国の民間伝承や演劇、さらには現代の文学や映像作品に至るまで、幅広く影響を与えています。

『三国志演義』との違い

『三国志』とよく混同されるのが、後世に書かれた『三国志演義(さんごくしえんぎ)』です。『三国志演義』は、元・明代に羅貫中(らかんちゅう)によって編纂された小説で、三国志の物語を基にして、英雄たちの活躍を物語として描いた作品です。

『三国志』は歴史書であり、実際の記録に基づいて編纂されたもので、事実に基づいた記述がされています。一方、『三国志演義』は、フィクションとしての要素が強く、物語として読者を楽しませることが目的で、登場人物が英雄的に描かれるなど、創作が多く加えられています。

三国志の後の影響

『三国志』は、後の中国のみならず、東アジア全体に多大な影響を与えました。日本でも、『三国志』や『三国志演義』の影響は非常に大きく、歴史的な学問だけでなく、文学や芸術の題材として広く取り上げられています。また、三国時代に登場する人物たちは、日本の武士道精神や戦略にも影響を与えており、特に諸葛亮の知略は後世の戦国時代の武将たちにも模範とされました。

まとめ

『三国志』は、陳寿によって編纂された中国三国時代の公式な歴史書であり、魏・蜀・呉の三国が繰り広げた興亡の歴史を詳しく記録しています。三国時代は、国家分裂と統一が繰り返される動乱の時代であり、その出来事や人物たちは後の中国文化や東アジア全体に深く影響を与えました。『三国志』は単なる歴史書にとどまらず、英雄の物語や戦略思想として、今も多くの人々に読み継がれています。