御幣とは?ギザギザの2本の紙垂(しで)を木に挟んだ神祭用具

御幣とは?ギザギザの2本の紙垂(しで)を木に挟んだ神祭用具

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祓え給い、清め給え

神社の拝殿や家庭の神棚で目にする、木の串にギザギザの紙を挟んだ道具。あるいは、神職が祈祷の際に左右に振る、あの白い紙のついた棒。それが御幣(ごへい)です。

多くの人は、両側に長く折り下げられた紙の部分こそが御幣の本体だと思っているのではないでしょうか。ところが、捧げ物としての御幣の中心は、実はその折り下げた紙ではなく、串に挟まれた部分そのものにあります。

この記事では、御幣の読み方や意味、幣帛との関係、紙垂が持つ象徴、そして古墳時代から現代まで続く変遷を、丁寧に解説していきます。

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御幣の読み方と別称

「御幣」と書いて「ごへい」と読みます。地域によっては「おんべい」「おんべ」と読むこともあります。

別の呼び方として、幣束(へいそく)、幣(ぬさ)などがあります。「ぬさ」は麻の古名で、『万葉集』にも「奴左(ぬさ)取り向けて」という表現が見られる、大変古い言葉です。

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御幣とは何か、幣帛との関係

御幣とは、神道の祭祀で用いられる幣帛(へいはく)の一種で、2本の紙垂(しで)を竹または木の幣串に挟んだものです。

ここで整理しておきたいのが、御幣と幣帛の関係です。

「幣」は麻(麻布)を、「帛」は絹(白絹)を意味します。どちらも古代において神への捧げ物の代表でした。そこから「幣帛」という言葉は、神々への捧げ物の総称を意味するようになります。幣帛は「みてぐら」「いやじり」とも読まれます。

つまり、みてぐらとは御幣そのものの古語ではなく、より広い「神への捧げ物全般」を指す言葉なのです。『延喜式』には幣帛の品目として、絹布、麻、衣服、刀、楯、弓、鍬、酒、鰒、鰹、海藻、塩などが記されています。玉串もまた幣帛の一種です。

そして「御幣」とは、貴重な品を示す「幣(へい)」に、尊称の「御(ご)」を付けたものです。数ある幣帛のうち、串に挟んで捧げる形式のものが御幣というわけです。

余談ですが、「貨幣」「紙幣」の「幣」も、この御幣の「幣」に由来します。もともと貴重な捧げ物を意味した文字が、貴重な価値を持つお金を指す文字へと転じていったのです。

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御幣の本体は紙垂ではない

御幣について、最も誤解されやすい点があります。

捧げ物としての御幣の中心は、両側に長く折り下げられた紙垂ではなく、串に挟まれた「幣紙」の部分そのものにあります。國學院大學の研究者も、この点を明確に指摘しています。

古墳時代から、日本人は神々に貴重な品々を捧げてきました。稲、酒、塩、魚といった神饌のほか、鉄製の武器や農工具、器、玉、鏡、衣類、布類など。これらはいずれも、その時代の最先端技術を象徴する品でした。同時に、神々の霊魂が宿る依代でもあったのです。

やがて布を折りたたんで串に挟んで捧げる形が生まれ、これが御幣の原形となります。その串に挟まれた布こそが捧げ物の本体であり、両側に垂らした木綿や麻は、その神聖性を示すための添え物でした。

そして布に代わって紙が用いられるようになります。紙もまた、当時は極めて貴重な品でした。垂らす部分も、木綿や麻から、細長く折り下げた紙へと変わっていきます。これが紙垂の起こりで、13世紀末ごろのことです。

ここからは筆者の考えですが、この事実には考えさせられるものがあります。私たちが御幣といえば真っ先に思い浮かべるあのギザギザの形は、本来は脇役だったのです。時代が下るにつれ紙垂は太く大きくなり、やがて幣紙と一体化して、主客が入れ替わってしまいました。伝統とは固定されたものではなく、形を変えながら受け継がれていくものなのだと、御幣の姿は教えてくれます。

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紙垂が象徴するもの

紙垂(しで)とは、特殊な裁ち方をして折った紙のことです。「しで」という言葉は、動詞「垂ず(しづ)」の連用形で、「しだれる」と同じ語源を持ちます。

その起源は日本神話にさかのぼります。『古事記』の天岩戸の場面で、岩戸の前に立てた榊の枝に「白丹寸手(しらにきて)」と「青丹寸手(あをにきて)」を垂らしたと記されています。この布が、紙垂の原型と考えられています。

紙垂の独特なギザギザの形は、雷、すなわち稲妻を表しているとされます。落雷があると稲が育ち豊作になると信じられていたため、五穀豊穣を願う意味が込められました。稲の妻と書いて稲妻と読むのも、同じ発想です。また雷には邪悪なものを祓う力があると考えられていたことも、この形が選ばれた理由の一つです。

紙垂は通常、白い紙で作られます。白は清浄を意味する色です。ただし御幣に取り付ける紙垂には、白だけでなく五色の紙や、金箔銀箔が用いられることもあります。

紙の断ち方や折り方には流派があり、地域によって多様化しています。宮城県気仙沼市の早馬神社には、69種類もの切り紙が伝承されているといいます。

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御幣が果たす三つの役割

もともと神への捧げ物であった御幣は、時代とともに複数の役割を担うようになりました。

神への捧げ物として

これが本来の姿です。神饌(食物)以外の捧げ物として、串に挟んだ幣紙を神前に供えます。神と人との橋渡しをする、重要な供物です。

神の依代として

後に、社殿の中に立てて依代(よりしろ)とし、あるいは御神体そのものとして扱われるようになりました。捧げ物であると同時に、神霊が宿る器でもあるという二重性を持つようになったのです。

祓具として

神職がお祓いの際に手に持ち、左右に振って場や人を清める道具としても用いられます。この場合、御幣に穢れが移ると考えられています。

なお、祓いに用いる道具としては大麻(おおぬさ)もあります。白木の棒で作ったものは祓串(はらえぐし)とも呼ばれます。御幣と大麻は形が似ていますが、大麻は榊の枝や白木の棒に麻や紙垂をつけたもので、より祓いに特化した祭具です。

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御幣の歴史、紙が普及する前の姿

御幣の歴史をたどると、興味深い古い形が見えてきます。

紙が普及する以前には、ヤナギ、ニワトコ、ヌルデ、クルミ、マツといった木の肌を薄く削ぎ、渦状に縮らせて垂らしておく「削り掛け」という祭具が用いられていました。削り花、穂垂(ほたれ)、掻垂(かいたれ)とも呼ばれます。アイヌ文化のイナウにも、これとよく似た形が見られます。

木を削って作る素朴な祭具から、麻や木綿を垂らす形へ、そして紙垂へ。素材が変わっても、「串に挟んで捧げる」「垂らして神聖性を示す」という骨格は、驚くほど変わっていません。

室町時代から江戸時代にかけて、榊(玉串、真榊)とともに、神前に御幣を捧げる形が広く普及し定着しました。この時期に、捧げ物本体である幣紙、神聖性を示す紙垂、それらを挟む幣串という、現代に続く構造が固まっていきます。

なお、長い棒や竹の先端に幣束を何本か取り付けたものを、特に梵天(ぼんてん)と呼びます。

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御幣の作り方

御幣の基本的な作り方は、比較的シンプルです。

材料は、木の棒(多くは榊や竹)と、紙または布(白色が主流)です。

  • 木の棒を適当な長さに切る(一般的には30から50センチ程度)
  • 紙垂を作る。白い紙を蛇腹に折り、鋏でギザギザの切り込みを入れる
  • 作った紙垂を木の棒に挟み、固定する

ただし紙垂の折り方には吉田流、白川流、伊勢流などの流派があり、地域による差も大きいのが実情です。自宅の神棚に祀る場合は、氏神様や地域の神社で授与されているものを求めるのが確実です。

神棚に祀る際は、神棚の大きさに応じて3本または5本を立てるのが基本とされます。ただし地域によっては左右1本ずつのところもあり、厳密な決まりがあるわけではありません。中央かつお札よりも手前に、垂直に立ててお祀りします。

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紙垂が使われる、しめ縄と玉串

紙垂は御幣だけのものではありません。しめ縄や玉串にも用いられ、その意味は場面によって変わります。

しめ縄に取り付ける紙垂は、聖域を示す印となります。神の領域と俗世を隔てる結界の役割です。しめ縄、紙垂、房が揃うと、しめ縄は雲、紙垂は稲妻、房は雨を表し、五穀豊穣を祈る思いが込められているといわれます。

玉串や大麻、御幣に取り付ける紙垂は、祓具としての意味を持ちます。同じ形の紙が、取り付けられる場所によって、境界を示すものにも、祓うものにもなる。神道の道具の奥深さがここにあります。

ちなみに相撲の横綱が土俵入りで締める綱にも、紙垂が垂らされています。白麻で作られたこの綱は、横綱だけが締めることを許される特別なものです。相撲が神事であり、横綱が神の依代とみなされていることが、ここからも見て取れます。

まとめ

御幣は、神道の祭祀に用いられる幣帛の一種で、2本の紙垂を幣串に挟んだ祭具です。「幣」は麻、「帛」は絹を意味し、幣帛とは神への捧げ物の総称を指します。

私たちが御幣の象徴として思い浮かべるギザギザの紙垂は、実は本来の中心ではありません。捧げ物としての本体は、串に挟まれた幣紙の部分にあり、そこには各時代の最上の品が用いられてきました。古墳時代の鏡や武具から、布へ、そして紙へ。捧げ物の歴史は、その時代の最先端技術の歴史でもあったのです。

やがて御幣は、捧げ物であると同時に神の依代となり、祓いの道具ともなりました。稲妻を模した紙垂には、五穀豊穣への祈りと、邪気を祓う力が込められています。

神社で、神棚で、あるいは地域の祭りで御幣を目にしたとき、その白い紙の向こうに、神話の時代から途切れることなく続いてきた捧げ物の歴史を、少しだけ思い出してみてください。

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祓え給い、清め給え

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