磐筒男神(いわつつのおのかみ)は、日本神話に登場する神で、『古事記』や『日本書紀』にその名が記されています。主に火神・迦具土神(カグツチ)の誕生に伴う神産みにおいて登場し、岩石や剣と深い関わりを持つ神とされています。本記事では、磐筒男神の神話における役割や御神徳、ご利益について詳しく解説します。
磐筒男神(いわつつのおのかみ)とは?
磐筒男神は、日本神話に登場する神で、火神・迦具土神(カグツチ)の誕生により亡くなった伊耶那美命(イザナミ)の復讐として、伊耶那岐命(イザナギ)が迦具土神を斬った際に、その血が岩に飛び散って生まれた三神の一柱です。他の二柱は石析神(いわさくのかみ)と根析神(ねさくのかみ)です。
『日本書紀』の異伝では、磐裂神・根裂神の子とされ、磐筒女神とともに経津主神(ふつぬしのかみ)の親神とされています。磐筒男神は岩や剣と関係が深く、鉱石・鍛冶・武神の要素を持つと考えられ、武運長久や建築・石工の守護神としての信仰が考えられます。
磐筒男神の神話と由来
『古事記』における磐筒男神
『古事記』の神産みの段によると、伊耶那岐命(イザナギ)が妻・伊耶那美命(イザナミ)を亡くした原因である火神・迦具土神(カグツチノカミ)の首を斬った際、その血が岩に飛び散り、そこから三柱の神が生まれました。この三柱の神は以下の通りです。
- 石析神(いわさくのかみ)
- 根析神(ねさくのかみ)
- 石箇之男神(いしかのおのかみ)=磐筒男神(いわつつのおのかみ)
磐筒男神はこの三神のうち最後に生まれた神であり、岩石や鉱石に関係する力を持つ神と考えられます。
『日本書紀』における磐筒男神
『日本書紀』では、磐筒男神に関する記述が二つの異なる伝承(異伝)に分かれています。
日本書紀 第六の一書 における磐筒男神
磐筒男神は経津主神(ふつぬしのかみ)の祖であるとされます。経津主神は後に香取神宮(千葉県)の主祭神となり、武神として信仰される神です。このことから、磐筒男神も武神の系譜に連なる神と考えられます。
日本書紀 第七の一書 における磐筒男神
磐裂神(いわさくのかみ)と根裂神(ねさくのかみ)の子として磐筒男神・磐筒女神が生まれ、この二神の子が経津主神であるとされています。これは、磐筒男神が単独で誕生したのではなく、磐裂神・根裂神の系譜に位置づけられている点が特徴的です。
磐筒男神の御神徳・ご利益
磐筒男神は、火神・迦具土神の血から生まれた神であり、岩や剣、鉱石に関係する神格を持っています。そのため、以下のような御神徳やご利益が考えられます。
岩・鉱石・鉱山の神
磐筒男神は岩石に関する神であるため、鉱山や石材業、建築業の守護神としての性格を持つと考えられます。古代においても、鉱石から刀剣や武器を作ることが重要だったため、武器製造や鍛冶の神としても関連がある可能性があります。
武神としての性格
『日本書紀』では磐筒男神が経津主神の祖とされていることから、武神としての側面も持つと考えられます。経津主神は香取神宮で戦勝や武運長久の神として崇められていますが、その祖神である磐筒男神も、武士や軍事関係者の守護神として信仰される可能性があります。
鍛冶・刀剣との関係
磐筒男神は、十拳剣(とつかのつるぎ)に付いた血から生まれた神であるため、剣との関係が深い神といえます。そのため、鍛冶職人や刀匠の守護神としての信仰も考えられます。また、刀剣に関する神事や儀礼にも関係している可能性があります。
磐筒男神を祀る神社
磐筒男神を主祭神として祀る神社は確認されていませんが、経津主神を祀る香取神宮(千葉県)などでは、磐筒男神の影響を受けた信仰が根付いていると考えられます。実際に香取神宮境内には「匝瑳神社(そうさじんじゃ)」として、香取大神の親神と明記され、御祭神として、磐筒男神と磐筒女神が祀られています。
また、鉱山信仰や刀剣信仰のある神社で、関連する神として崇敬される可能性もあります。
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まとめ
磐筒男神は、日本神話において迦具土神の血から生まれた神であり、岩や鉱石、武器や刀剣と関係の深い神です。『日本書紀』では経津主神の祖とされていることから、武神としての性格も持ち、戦勝祈願や鍛冶の神としても信仰された可能性があります。
現代においては、鉱業・石材業・建築業・鍛冶・武道などに関わる人々の守護神として、磐筒男神の存在を再評価することができるでしょう。