
神棚は、日本の家庭において神さまをおまつりする大切な場所です。しかし、設置する方角やお供えの仕方、お札の並び順については、情報が断片的で迷う人も少なくありません。本記事では、神社本庁が示す基本的な考え方を軸に、神棚の由来から具体的な飾り方、現代の住まいに合った神棚のあり方、注意すべきタブーまでを丁寧に解説します。形式を守ることだけでなく、神棚に込められた意味を理解することを大切にしながら読み進めてください。
正しく理解するためには、神社本庁が配布している「暮らしの中の神棚(お神札を家庭に)」がわかりやすく、この記事でも参考にさせていただいております。
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神棚とは何か、その由来
神棚とは、家の中で神さまをおまつりするための場所を指します。神棚に据えられる、神社の社殿をかたどったものは「宮形」と呼ばれます。古代には、現在のような神棚はなく、お神札を柱や清浄な場所に立てかけておまつりしていました。
古事記 上巻には、伊邪那岐命が天照大御神に高天原を治めることを託した際、御頸珠から生まれた神として「御倉板挙之神」が登場します。この神名の「板挙(タナ)」が、神棚の語源の一つとされ、神さまを迎える「棚」という概念の成立と結びついて語られてきました。神棚は、日々の暮らしを神の御前に開き、見守っていただくための象徴的な場なのです。
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神棚のお参りの仕方、神棚拝詞(かみだなはいし)
神棚でのお参りは基本的には神社のお参りと同じ作法になります。
神社を参拝する時と同じように手や口を清めた上で、二拝二拍手一拝が基本となります。
神棚拝詞(かみだなはいし)の内容
より丁寧にお参りする場合、神棚拝詞を読み上げると良いとされています。
神棚拝詞(かみだなはいし)
此(こ)の神床(かむどこ)に坐(ま)す 掛(か)けまくも畏(かしこ)き 天照大御神(あまてらすおおみかみ)・産土大神(うぶすなのおおかみ)等(たち)の大前(おおまえ)を拝(おろが)み奉(まつ)りて 恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(もう)さく 大神等(おおかみたち) の広(ひろ)き厚(あつ)き御恵(みめぐみ)を辱(かたじけ)なみ奉(まつ)り 高(たか)き尊(とうと) き神教(みおしえ)の随(まにま)に直(なお)き正(ただ)しき真心(まごころ)もちて 誠(まこと)の道(みち)に違(たが)うことなく 負(お)い持(も)つ業(わざ) に励(はげ)ましめ給(たま)い 家門(いえかど)高(たか)く 身健(みすこ)や かに 世(よ)のため人(ひと)のために尽(つく)さし め給(たま)えと恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(もう)す
神棚拝詞の意味としては、「この神棚にいらっしゃる天照大御神様、そしてこの土地をお守りくださる神様の御前に、謹んでご挨拶申し上げます。神様たちの深く広いお恵みに、心から感謝いたします。 尊い神様の教えを大切にし、素直で正しい心を持って、人として恥ずかしくない生き方をし、自分の仕事(役割)にしっかりと励むことができますように。そして、家が栄え、家族みんなが健康で過ごせ、世の中のため、人のために尽くすことができますように。 どうかお見守りください。」という感じになります。
祝詞とは?(のりと)神社で祝詞をあげる(奏上する)ことの意味
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神棚の種類と現代の住まい
神棚の宮形には、伝統的な三社造りや一社造りがあります。三社造りは中央と左右に扉がある形式で、複数のお神札を明確な序でおまつりできるのが特徴です。一社造りは一つの社殿型で、限られた空間でも設置しやすく、現代住宅で多く用いられています。
近年では、インテリアに調和するモダン神棚や、卓上型のお神札立ても普及しています。神社本庁の考え方では、形式よりも「清浄な場所に丁重におまつりすること」が重視されており、住まいに合った形を選ぶこと自体は問題ありません。
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神棚の設置場所と方角の考え方
神棚は、家族が日常的に手を合わせやすく、清浄を保ちやすい場所に設けます。一般的には、目線より高い位置で、南向きまたは東向きが望ましいとされています。これは太陽の巡りと結びついた、日本の自然観に基づく考え方です。
一方で、現代住宅では間取りの制約も多いため、必ずしも理想の方角にこだわる必要はありません。大切なのは、神棚の上を人が踏み歩かないことや、不浄とされる場所を避ける配慮を行うことです。
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お神札の種類とおまつりする意味
神社本庁では、日々の暮らしを見守っていただくために、伊勢神宮のお神札である神宮大麻と、地域を守る氏神神社のお神札をおまつりすることを基本としています。これに加えて、個人が特別に信仰する崇敬神社のお神札をおまつりする場合もあります。
これらのお神札は、神の御霊を宿す依代であり、単なる紙ではありません。そのため、丁重に扱い、清浄な場所に納めることが求められます。
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お神札の並び方と御神座の順位
神棚でお神札をおまつりする際には、御神座の順位を意識します。順位は中央が最上位、次に向かって右、その次が向かって左とされます。以下の表は、神社本庁が示す一般的な並び方です。
参拝時に受けたその他のお神札は、崇敬神社のお神札の後ろに重ねて納めます。お神札が増えて宮形に収まらない場合は、宮形の横に丁重に並べておまつりします。
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神棚のお供えと神饌の考え方

神棚にお供えする神さまのお食事を「神饌」といいます。基本となるのは米、塩、水で、必要に応じてお酒や季節の初物をお供えします。神饌は、神と人が食を通じて結ばれるという、日本文化の象徴的な行為です。
毎朝お参りする前に新しいものに取り替えるのが理想とされますが、無理のない範囲で続けることが大切です。お供えしたものは、お下がりとして感謝の気持ちをもって家庭でいただきます。
神棚のお供え配置図

米(おこめ)
~神饌(しんせん)の中心となる最も重要なお供え~ 生米(洗米)を、白皿(皿・かわらけ)に入れてお供えします。日本人の主食であるお米は、神様のお恵みの象徴であり、お供え物の中でも最も重要なものとして扱われます。 飾り方の基本としては、神棚の中心(正中)に配置します。毎日新しいお米に取り替え、下げたお米は「お下がり」として感謝していただきましょう。
塩(おしお) 場を清め、神聖な空間を保つ
粗塩を小皿に盛り、円錐状に高く整えた「盛り塩」にしてお供えします。塩には古くから穢れ(けがれ)を祓い、清める力があるとされています。 基本的には、向かって右側にお供えします。綺麗な山の形を作るための専用の型なども市販されていますので、活用すると美しい形を保ちやすくなります。
水(おみず) 生命の源である、朝一番の清らかな水を
その日の朝、誰よりも先に汲んだ「初水」をお供えします。水器(水玉)に入れ、神棚にお上げする際には蓋(ふた)を外して神様に召し上がっていただく形をとります。 基本的には、向かって左側にお供えします。水は生命の源であり、清浄さの象徴です。毎日取り替えて、常に瑞々しい状態を保ちましょう。
酒(おみき・おさけ)神様と人をつなぐ、米から作られた恵み
お米から作られた日本酒(清酒)を、「瓶子(へいし)」と呼ばれる一対の器に注いでお供えします。お米のエキスが詰まったお酒は、神様との精神的なつながりを強めると言われています。 普段は蓋をしておき、お参りをする時だけ蓋を取るのが一般的です。毎日の交換が難しい場合でも、毎月1日と15日やお祭りの日には必ず新しいお酒をお供えしましょう。
榊(さかき) 神界と人間界の境界を示す常緑樹
榊は一年中緑を保つ常緑樹であり、「栄える木(栄木)」や神域との「境の木(境木)」が語源とも言われます。神棚の左右にある「榊立て」に一対でお供えします。 榊が枯れることは、神様が家の不浄や災いを吸い取ってくださった証とも考えられています。生花店やスーパーで購入できますので、水は毎日取り替え、枯れてきたらすぐに新しいものに取り替えましょう。
かがり火(かかりび) 神様の知恵と神威を象徴する御神火
神棚の左右に配置し、御神前を明るく照らすためのものです。「灯明(とうみょう)」とも呼ばれ、ローソクを立てる金属製の台や、灯籠型のものがあります。 本来は参拝の際に火を灯し、拝礼が終われば消しますが、近年では防災の観点から電池式のLEDローソクや、電気コード式の灯籠を使用する家庭も増えています。
真榊・五色布(まさかき・ごしきふ) 彩りを添え、神様の威光を高める装飾
陰陽五行説に基づく「緑・黄・赤・白・紫」の五色の布(旗)と、三種の神器(剣・鏡・勾玉)を模した飾りがついた祭具です。
神棚の左右(榊の内側など)に立てることで、より丁寧で本格的なお祀りとなります。五色の布は宇宙の万物を表現しており、神様の威光(神威)をより一層高める役割を持っています。
脚付き折敷(あしつきおしき) 神様への敬意を表す、お供えを乗せる台
神饌(お米・塩・水など)を直に棚板に置くのではなく、一段高いこの台に乗せてお供えすることで、より丁寧な礼儀となります。「三方(さんぼう)」もこの一種です。 飾る際の重要な作法として、台の縁にある「継ぎ目(綴じ目)」が、神様側ではなく「手前(自分側)」に来るように置きます。これには「神様に完全な面を向ける」という意味が込められています。
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お神札を取り換える時期と古札の扱い
お神札は一年を目安に新しいものに取り換えます。年の暮れに神棚を清め、新年を迎える準備として新しいお神札をおまつりします。古いお神札は、一年間お守りいただいたことへの感謝を伝えたうえで、受けた神社の古神札納所へ納め、お焚き上げをしていただきます。
遠方の神社で受けたお神札の場合は、近隣の神社でお焚き上げが可能かを確認してから納めるのが望ましいとされています。多くの神社では、大晦日から小正月にかけて左義長やどんど焼きが行われ、正月飾りとともに古札が清められます。
神棚で気をつけたいタブーと心構え
神棚において最も避けたいのは、不浄や無関心です。汚れたまま放置することや、形だけを整えて心を向けないことは、神棚の本来の意味を損ないます。一方で、形式に過度に縛られて不安になる必要はありません。
神社本庁の考え方においても、神棚は日々の感謝と祈りを捧げる場であり、生活の中で神と向き合う「心の姿勢」こそが最も重視されています。
現代における神棚の意義
神棚は、特別な人のためのものではなく、日常の中で日本人が神と共に生きてきた文化の象徴です。住まいの形や生活様式が変わっても、神棚を通じて感謝と節目を意識することは、現代においても大きな意味を持ちます。現代風のお家に神棚は似合わないという人も多くいらっしゃいます。時代に合わせてスタイリッシュな神棚なども出てきていますので、形式にこだわりすぎず、日頃から感謝の心と、現代人に不足しがちな「自分の心と向き合う習慣」を養うためにも神棚は大切な場となると思います。
正しい知識を踏まえたうえで、自分の暮らしに合った神棚のあり方を見つけることが、神道的にも自然で誠実な姿といえるでしょう。













