大祓祝詞(おおはらえののりと)は、日本神道において心身の穢れを祓い、清浄な状態へと導く重要な祝詞です。毎年6月と12月の大祓で唱えられるこの祝詞には、自然や神々との調和を取り戻す祈りが込められています。本記事では、大祓祝詞の全文をひらがな読みと現代語訳で詳しく解説し、その深い意味と浄化の効果について考察します。日本古来の精神文化に触れ、日常生活に取り入れるヒントを見つけてみましょう。
大祓詞(おおはらえのことば)・大祓祝詞(おおはらえののりと)とは?
大祓詞(おおはらえのことば)は、神道における代表的な祝詞で、主に6月と12月の大祓の際に唱えられます。この祝詞は、日常生活で知らず知らずのうちに犯した罪や穢れを祓い清め、心身の浄化を願うものです。その起源は古く、『延喜式』にも記載されています。『古事記』や『日本書紀』にも関連する浄化の儀式が記されており、現代でも多くの神社で「六月大祓」と「十二月大祓」の際に奉唱されています。
大祓祝詞の全文
高天原に神留り坐す皇親神漏岐神漏美の命以ちて八百萬神等を神集へに集へ賜ひ神議りに議り賜ひて我が皇御孫の命は豊葦原の水穂の國を安國と平けく知ろし食せと事依さし奉りきかく依さし奉りし國中に荒振る神等をば神問はしに問はし賜ひ神掃ひに掃ひ賜ひて語問ひし磐根樹根立草の片葉をも語止めて天の磐座放ち天の八重雲を伊頭の千別きに千別きて天降し依さし奉りきかく依さし奉りし四方の國中と大倭日高見國を安國と定め奉りて下つ磐根に宮柱太敷き立て高天原に千木高知りて皇御孫の命の瑞の御殿仕へ奉りて天の御蔭日の御蔭と隱り坐して安國と平けく知ろし食さむ國中に成り出でむ天の益人等が過ち犯しけむ種種の罪事は天つ罪國つ罪許許太久の罪出でむかく出でば天つ宮事以ちて天つ金木を本打ち切り末打ち斷ちて千座の置座に置き足らはして天つ菅麻を本刈り斷ち末刈り切りて八針に取り辟きて天つ祝詞の太祝詞事を宣れかく宣らば天つ神は天の磐門を押し披きて天の八重雲を伊頭の千別きに千別きて聞こし食さむ國つ神は高山の末短山の末に上り坐して高山の伊褒理短山の伊褒理を搔き別けて聞こし食さむかく聞こし食してば罪と云ふ罪は在らじと科戶の風の天の八重雲を吹き放つ事の如く朝の御霧夕の御霧を朝風夕風の吹き拂ふ事の如く大津邊に居る大船を舳解き放ち艫解き放ちて大海原に押し放つ事の如く彼方の繁木が本を燒鎌の敏鎌以ちて打ち掃ふ事の如く遺る罪は在らじと祓へ給ひ清め給ふ事を高山の末短山の末より佐久那太理に落ち多岐つ速川の瀨に坐す瀨織津比賣と云ふ神大海原に持ち出でなむかく持ち出で往なば荒潮の潮の八百道の八潮道の潮の八百會に坐す速開都比賣と云ふ神持ち加加呑みてむかく加加呑みてば氣吹戸に坐す氣吹戸主と云ふ神根國底國に氣吹き放ちてむかく氣吹き放ちてば根國底國に坐す速佐須良比賣と云ふ神持ち佐須良ひ失ひてむかく佐須良ひ失ひてば罪と云ふ罪は在らじと祓へ給ひ清め給ふ事を天つ神國つ神八百萬神等共に聞こし食せと白す
大祓祝詞のひらがな読み
たかまのはらにかむづまります
すめらがむつかむろぎ
かむろぎのみこともちて
やほよろづのかみたちをかむつどへにつどへたまひ
かむはかりにはかりたまひ
てあがすめみまのみことは
とよあしはらみづほのくにを
やすくにとたいらけくしろしめせと
ことよさしまつりき
かくよさしまつり
しくぬちにあらぶるかみたちをば
かむとはしにとはしたまひ
かむはらひにはらひたまひて
こととひしいはねきねたちくさ
のかきはをもことやめて
あめのいはくらはなち
あめのやへぐもを
いつのちわきにちわきて
あまくだしよさしまつりき
かくよさしまつりしよものくになかと
おほやまとひだかみのくにを
やすくにとさだめまつりて
したついはねにみやばしらふとしきたて
たかまのはらにちぎたかしりて
すめみまのみことのみづのみあらかつかへまつりて
あめのみかげひのみかげとかくりまして
やすくにとたいらけく
しろしめさむくぬちになりいでむ
あめのますびとらがあやまちをかしけむ
くさぐさのつみごとは
あまつつみくにつつみここだくの
つみいでむ
かくいでば
あまつみやごともちて
あまつかなぎをもとうちきり
すゑうちたちて
ちくらのおきくらにおきた
らはして
あまつすがそをもとかりたち
すゑかりきりて
やはりにとりさきて
あまつのりとのふとのりとごとをのれ
かくのらば
あまつかみはあめのいはとをおしひらきて
あめのやへぐもをいつのちわきにちわきて
きこしめさむ
くにつかみはたかやまのすゑ
ひきやまのすゑにのぼりまして
たかやまのいぼりひきやまのいぼりを
かきわめてきこしめさむ
かくきこしめしてば
つみといふつみはあらじと
しなどのかぜのあめのやへぐもを
ふきはなつことのごとく
あしたのみぎり
ゆふべのみぎりをあさかぜ
ゆふかぜのふきはらふことのごとく
おほつべにをるおほふねを
へときはなちともときはなちて
おほうなばら
におしはなつことのごとく
をちかたのしげきがもとを
やきがまのとがまもちて
うちはらふことのごとく
のこるつみはあらじと
はらへたまひきよめたまふことを
たかやまのすゑひきやまのすゑより
さくなだりにおちたぎつ
はやかわのせにますせおりつひめといふかみ
おほうなばらにもちいでなむ
かくもちいでいなば
あらしほのしほのやほぢのやしほぢのしほのやほあひにます
はやあきつひめといふかみもちかかのみてむ
かくかかのみてば
いぶきどにますいぶきどぬしといふかみ
ねのくにそこのくににいぶきはなちてむ
かくいぶきはなちてば
ねのくにそこのくににます
はやさすらひめといふかみ
もちさすらひうしなひてむ
かくさすらひうしなひてば
つみといふつみはあらじと
はらへたまひきよめたまふことを
あまつかみくにつかみやほよろづのかみたちともに
きこしめせとまをす
大祓祝詞の現代語訳
たかまのはらにかむづまります
高天原に神々が住まわれ
すめらがむつかむろぎ
皇親の神である神漏岐(かむろぎ)
かむろぎのみこともちて
神漏美(かむろみ)の命を用い
やほよろづのかみたちをかむつどへにつどへたまひ
八百万の神々を神集めに集めていただき
かむはかりにはかりたまひ
神議りに議りを行っていただきました。
てあがすめみまのみことは
そして、私たちの皇御孫命(すめみまのみこと)は
とよあしはらみづほのくにを
豊葦原瑞穂の国を
やすくにとたいらけくしろしめせと
安らかな国として平和に治めてくださいと
ことよさしまつりき
事を依頼申し上げました。
かくよさしまつり
このように依頼申し上げ
しくぬちにあらぶるかみたちをば
国中に荒々しい神々を
かむとはしにとはしたまひ
神々に尋ね、問いただしていただき
かむはらひにはらひたまひて
神の力で清め、祓っていただき
こととひしいはねきねたちくさ
岩や木々の根、草の葉に至るまで語り止めていただきました。
のかきはをもことやめて
そして草の片葉も語り止めて
あめのいはくらはなち
天の磐座(いわくら)を開き
あめのやへぐもを
天の八重雲を
いつのちわきにちわきて
いつくにも分けていただき
あまくだしよさしまつりき
この国に降り立つように依頼申し上げました。
かくよさしまつりしよものくになかと
このように依頼申し上げて整えられた四方の国と
おほやまとひだかみのくにを
大和日高見の国を
やすくにとさだめまつりて
安らかな国として定め申し上げ
したついはねにみやばしらふとしきたて
大地の岩根に宮柱を太く立てて
たかまのはらにちぎたかしりて
高天原に千木を高く掲げ
すめみまのみことのみづのみあらかつかへまつりて
皇御孫命の神聖な御殿をお仕え申し上げ
あめのみかげひのみかげとかくりまして
天の御蔭と日の御蔭に隠れていらっしゃり
やすくにとたいらけく
平和な国として治められるようになりました。
しろしめさむくぬちになりいでむ
治められる国で生きる人々が
あめのますびとらがあやまちをかしけむ
天の益人(ますびと)たちが誤りや過ちを犯した時
くさぐさのつみごとは
様々な罪については
あまつつみくにつつみここだくの
天の罪、地の罪、多くの罪を含みますが
つみいでむ
それらの罪が現れた場合
かくいでば
このようにして
あまつみやごともちて
天の神事を行い
あまつかなぎをもとうちきり
天の金木(かなぎ)を根元から打ち切り
すゑうちたちて
末端を切り分け
ちくらのおきくらにおきた
千座の置座に置き整えます。
らはして
それを清め整えて
あまつすがそをもとかりたち
天の菅麻(すがそ)を根元から刈り取り
すゑかりきりて
末端まで切り揃え
やはりにとりさきて
八針に裂き分けて
あまつのりとのふとのりとごとをのれ
天の祝詞の太祝詞を述べ伝えます。
かくのらば
このように祝詞を述べると
あまつかみはあめのいはとをおしひらきて
天の神々は天の磐門を押し開き
あめのやへぐもをいつのちわきにちわきて
天の八重雲を細かく分け広げて
きこしめさむ
聞き届けてくださるでしょう。
くにつかみはたかやまのすゑ
地の神々は高山の頂上に
ひきやまのすゑにのぼりまして
低い山の頂上にも登り
たかやまのいぼりひきやまのいぼりを
高山の峰や低山の峰を
かきわめてきこしめさむ
掻き分けて聞き届けてくださるでしょう。
かくきこしめしてば
このように聞き届けてくだされば
つみといふつみはあらじと
罪という罪はもはや存在しないとされ
しなどのかぜのあめのやへぐもを
風が天の八重雲を吹き払うように
ふきはなつことのごとく
すべてを清め去ります。
あしたのみぎり
朝の霧が
ゆふべのみぎりをあさかぜ
夕べの霧を朝風が
ゆふかぜのふきはらふことのごとく
夕風が吹き払うように
おほつべにをるおほふねを
大津辺に浮かぶ大きな船の
へときはなちともときはなちて
舳(へ)や艫(とも)を解き放つように
おほうなばら
大海原へ
におしはなつことのごとく
押し流すように清め去り
をちかたのしげきがもとを
遠くの地に生える繁った木の根を
やきがまのとがまもちて
焼鎌の鋭い刃で
うちはらふことのごとく
打ち払うように
のこるつみはあらじと
もはや罪は残らないとされます。
はらへたまひきよめたまふことを
神々が祓い清めてくださることで
たかやまのすゑひきやまのすゑより
高山の頂上や低山の頂上から
さくなだりにおちたぎつ
険しい流れの滝へと落ち
はやかわのせにますせおりつひめといふかみ
速川の急流におられる瀬織津比賣(せおりつひめ)という神が
おほうなばらにもちいでなむ
それを大海原へと持ち出してくださるでしょう。
かくもちいでいなば
このように持ち出していただければ
あらしほのしほのやほぢのやしほぢのしほのやほあひにます
荒潮の八百の道、穏やかな潮の八百の道にある
はやあきつひめといふかみ
速秋津比賣(はやあきつひめ)という神が
もちかかのみてむ
その罪を飲み込んでくださるでしょう。
かくかかのみてば
このように飲み込んでいただければ
いぶきどにますいぶきどぬしといふかみ
気吹戸(いぶきど)におられる気吹戸主(いぶきどぬし)という神が
ねのくにそこのくににいぶきはなちてむ
根の国、底の国へと吹き払ってくださるでしょう。
かくいぶきはなちてば
このように吹き払っていただければ
ねのくにそこのくににます
根の国、底の国におられる
はやさすらひめといふかみ
速佐須良比賣(はやさすらひめ)という神が
もちさすらひうしなひてむ
それを持って行き、さすらわせて失わせてくださるでしょう。
かくさすらひうしなひてば
このようにして失わせていただければ
つみといふつみはあらじと
罪という罪はもはや存在しないとされます。
はらへたまひきよめたまふことを
神々が祓い清めてくださることで
あまつかみくにつかみやほよろづのかみたちともに
天つ神、国つ神、八百万の神々がともに
きこしめせとまをす
聞き届けてくださることをお祈り申し上げます。
大祓祝詞の意味
大祓祝詞は、主に以下の3つの要素から構成されています。
罪と穢れの浄化
人間が日常生活で知らず知らずのうちに積み重ねてしまう罪や穢れを、神々の力で清める内容が記されています。
自然の調和と回復
大祓祝詞は、自然界や人間社会が持つ元来の調和を取り戻すことを目的としています。これは日本の神道の「清浄(せいじょう)」の概念を象徴しています。
感謝と祈願
罪を祓い清めてくれる神々への感謝の意が込められており、その恩恵により個人や社会が安寧を得られるよう祈願します。
大祓祝詞の効果
大祓祝詞は、精神的・心理的な効果を持つとされています。
心のリセット
自分の中にあるネガティブな感情や後悔を手放し、心を軽くする効果が期待できます。
人間関係の浄化
祝詞を唱えることで、過去のトラブルや悪い縁を清算し、新たなスタートを切る助けとなります。
自然との一体感
祝詞を通じて自然や周囲との調和を再確認し、日常生活に感謝を持つきっかけとなります。
大祓祝詞に登場する神様の名前
- 神漏岐(かむろぎ)
- 神漏美(かむろみ)
- 瀬織津比賣(せおりつひめ)
- 速開都比賣(はやあきつひめ)
- 気吹戸主(いぶきどぬし)
- 速佐須良比賣(はやさすらひめ)
これらの神々は、大祓祝詞の中で浄化や祓いの役割を担う存在として登場しています。それぞれが具体的な役割や象徴を持ち、祓いの儀式を通じて罪や穢れを浄化する重要な神々です。
まとめ
大祓祝詞は、日本人の精神文化に深く根付いた重要な儀式文です。その内容を理解し、実際に唱えることで、心身の浄化や生活の改善につながるかもしれません。大祓の機会にはぜひ祝詞を唱え、神道の教えを日常に取り入れてみてはいかがでしょうか?