大物主神(おおものぬしのかみ)は、日本最古の神社の一つである大神神社(おおみわじんじゃ)の主祭神として知られ、国造りや生活全般を守護する神様です。『古事記』や『日本書紀』には、大国主神(おおくにぬしのかみ)の「幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)」として現れる重要な神とされ、古代から農業や商業、家内安全、縁結びなど多くのご利益をもたらしてきました。本記事では、大物主神の神話や系図、特徴、ご利益について詳しく解説します。
大物主神(おおものぬしのかみ)とは?
大物主神(おおものぬしのかみ)は、日本最古の神社の一つである大神神社(おおみわじんじゃ)の主祭神で、国造りや生活全般の守護神として知られています。その名が示す通り、「大いなる物事を司る主」として、農業や商業、健康、繁栄など多岐にわたるご利益を与える神様です。
『古事記』や『日本書紀』には、大物主神が大国主神(おおくにぬしのかみ)の「幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)」として現れたという記述があります。出雲の地で国造りを進める大国主神に対して、大物主神は自らを祀るよう伝え、「倭(やまと)の青垣、東の山(三輪山)の上に祀れ」と指示したとされています。これが現在の大神神社の原型となっています。
大物主神の系図
大物主神は、日本神話の中で非常に重要な位置を占める神ですが、その系譜ははっきりとはしません。
また、大物主神は大国主命の一部の魂(御霊)とされることから、大国主命との密接な関係が強調されています。この「幸魂・奇魂」という概念は、日本神話における霊的な側面を象徴しており、大物主神が持つ万能の神格を示しています。
大物主神の信仰と特徴
大神神社の祭祀の特徴 大神神社では、大物主神を祀るために古代の祭祀形式をそのまま伝えています。具体的には、神社に本殿を設けず、神が宿るとされる三輪山そのものを御神体としています。この形式は、神社建築が一般的になる以前の日本の原初的な信仰を色濃く残しています。
大神神社の歴史的意義 大神神社は、日本最古の神社とされ、出雲の神々と大和の神々をつなぐ重要な役割を担っています。また、三輪山は自然信仰の象徴として、古来から多くの人々が訪れ、その神秘性に魅了されてきました。
大物主神のご利益
大物主神は、生活全般を守護する神様として、以下のようなご利益をもたらすとされています。
五穀豊穣
農業の神として、作物の成長と収穫を助けます。
商売繁盛
事業や商売の成功を祈願する多くの人々が参拝に訪れます。
家内安全
家庭の円満と平穏を守る神として信仰されています。
健康長寿
病気平癒や健康祈願の神としても知られています。
縁結び
大国主神との関係から、良縁を結ぶ神としての信仰も根強いです。
大物主神と大神神社
大神神社は、奈良県桜井市の三輪山の麓に位置し、神体山である三輪山そのものをご神体として祀る、全国でも特異な神社です。この神社の最大の特徴は、自然そのものを神とする原始的な信仰形式を現在まで伝えている点です。
境内には、大きなしめ縄が飾られた三ツ鳥居や、参道に続く清らかな空間が広がり、多くの参拝者が心を込めて祈りを捧げます。
大神神社の御祭神は大物主大神、配祀には大己貴神(おおなむちのかみ=大国主神)、少彦名神(すくなひこなのかみ)となっています。
大物主神にまつわるエピソードをまとめた三輪山の神語り
おだまきの糸
『古事記』に記された活玉依姫(いくたまよりひめ)と大物主大神の恋物語。活玉依姫の両親が赤土と糸巻きを用いて正体を探ると、大物主大神であることが判明。この時、糸巻きが三巻き(三勾)残っていたことから「美和(三輪)」と名付けられました。大神神社に伝わる苧環(おだまき)の説話は、日本各地の類似伝承の原型ともいえます。
高橋活日(たかはしのいくひ)と美酒
崇神天皇が大物主大神を祀るために高橋邑の活日を掌酒(さかひと)に任命。活日が醸した美酒は、「倭の国を造った大物主大神の酒」とされ、以来、大物主大神は酒造りの神として敬われ、三輪の地は酒どころとして名を馳せました。
杉玉と酒屋の由来
大神神社のご神木である杉の霊威が酒造業者に信仰され、酒屋の看板として杉玉を吊るす習慣が生まれました。現在も酒造業者には大神神社から「しるしの杉玉」が授与され、毎年11月14日に掛け替えられています。
なで兎と卯の日
大神神社の例祭「大神祭」は卯の日に始まり、この縁から兎が神社の象徴に。大鳥居前の鉄灯籠の兎の置物は、身体の痛みや願い事を叶える信仰対象として「なで兎」として親しまれています。
大神穀主と三輪素麺
奈良時代、大神神社の神主の子孫である大神穀主(おおみわのたねぬし)が小麦栽培と素麺作りを始め、三輪素麺が誕生。以来、大物主大神は素麺作りの守護神とされています。
蛇体の神と卵
大物主大神が蛇の姿で顕現する神話が『日本書紀』に記されています。三輪山の神聖な蛇は「巳さん」として親しまれ、神社では好物の卵が供えられる風習が残っています。
参拝の心得
大神神社で大物主神を参拝する際のポイントは以下の通りです。
三輪山に感謝を込めて祈る
三輪山自体がご神体であるため、山を崇める気持ちを大切にします。
しめ縄を通じて神の力を感じる
境内のしめ縄や鳥居を敬いながら進むことが重要です。
清らかな心で参拝する
神社の水で手を清め、心身ともに清らかな状態で祈願します。
まとめ
大物主神は、国造りや農業、商業、健康、縁結びなど多岐にわたるご利益を持つ神様として、日本の歴史と文化に深く根付いています。大神神社での古来から続く祭祀の形式と信仰は、現代においても多くの人々の心を惹きつけ、信仰を集め続けています。ぜひ、大神神社を訪れて大物主神の御神徳を感じてみてはいかがでしょうか。