山の日はなぜできた?8月11日が祝日になった理由と日本人の山への信仰を解説

山の日はなぜできた?8月11日が祝日になった理由と日本人の山への信仰を解説

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祓え給い、清め給え

8月11日は山の日です。海の日や敬老の日と比べると、なんとなく新しい祝日という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。それもそのはず、山の日が施行されたのは2016年、まだ10年ほどの歴史しかない国民の祝日なのです。

この記事では、山の日がいつどのようにしてできたのか、なぜ8月11日という日付になったのか、そして日本人が古来どのように山を敬ってきたのかという信仰の背景まで、歴史と文化の両面から解説します。

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山の日はいつできた祝日でしょうか

山の日は、2014年(平成26年)の祝日法改正によって定められ、2016年(平成28年)から施行されました。日本で16番目の国民の祝日であり、現在のところ最も新しい祝日です。

祝日法に記された趣旨は、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」というものです。ここで注目したいのは「感謝する」という言葉が入っている点です。単に山で遊ぼうという趣旨ではなく、山から受けている恵みへの感謝が明記されているのです。

できごと
1995年海の日が祝日として制定される(施行は1996年)
2000年代山梨県など各地の自治体が独自の「山の日」を制定し始める
2010年日本山岳会などが全国「山の日」協議会を設立し、制定運動を本格化
2014年祝日法改正が成立。山の日が定められる
2016年山の日が施行され、第1回の山の日を迎える
2021年東京オリンピック開催のため、この年だけ8月8日に移動

制定を推し進めたのは、日本山岳会をはじめとする山岳団体や、山を抱える自治体でした。すでに海の日があるのだから、国土の約7割を山地が占めるこの国に山の日がないのはおかしいという声が、長年にわたって積み重なった結果です。

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なぜ8月なのでしょうか

山の日が8月に置かれた理由として、まず挙げられるのが8月には国民の祝日がひとつもなかったという事実です。

山の日ができる前、1年のうち祝日がまったくない月は6月と8月の2つでした。多くの人が夏休みを取り、お盆の帰省で移動するにもかかわらず、8月は制度上の休日がゼロだったのです。ここに祝日を置けば、お盆と連続した休暇が取りやすくなるという実利的な期待もありました。

もうひとつ、登山という活動の季節性もあります。本格的な夏山シーズンの真っ只中であり、山に親しむという趣旨にかなう時期でもありました。

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なぜ8月11日という日付になったのでしょうか

ここが山の日の成り立ちで最も知られていない部分です。日付の決定には、いくつもの案と、ひとつの重い配慮がありました。

当初、有力とされていたのは8月12日でした。お盆の直前で連休を作りやすいという理由からです。しかしこの日付には、大きな問題がありました。

1985年8月12日は、群馬県の御巣鷹の尾根に日本航空123便が墜落し、520名の方が亡くなった日です。単独機の航空事故として史上最悪の犠牲者数を出したこの日を祝日とすることには、遺族をはじめ各方面から強い懸念が示されました。

その結果、1日前倒しして8月11日とすることで決着します。祝日の日付が、ひとつの事故への配慮によって決まったという事実は、あまり広く知られていません。しかし山の日を考えるとき、この経緯は覚えておきたい点です。山は恵みをもたらすと同時に、時に人の命を奪う場所でもあるという現実が、この日付の背後にはあります。

なお、11日という数字については、8が山の形に見え、11が木が立ち並ぶ姿に見えるという説明も語られます。これは決定後に添えられた語呂合わせ的な解釈であり、日付が決まった主な理由ではありませんが、覚えやすい説明として広まっています。

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国民の祝日の中での位置づけ

日本の国民の祝日には、成り立ちによっていくつかの系統があります。山の日がどこに位置するのかを整理してみましょう。

系統由来
皇室・国家に関わるもの建国記念の日、天皇誕生日、文化の日紀元節や天長節など戦前の祝祭日を引き継ぐ
季節・自然に関わるもの春分の日、秋分の日、山の日、海の日暦や自然への感謝に根ざす
人や社会に関わるものこどもの日、敬老の日、勤労感謝の日戦後に定められた社会的な意味づけ

山の日は、春分の日や秋分の日と同じく自然への感謝に根ざす祝日に分類されます。そして興味深いことに、これらの祝日はいずれも、日本人が古くから自然に神を見てきた感覚と地続きです。

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日本人にとって山とは何だったのでしょうか

ここからは、祝日の話から離れて、日本人と山の関係をたどります。山の日の趣旨である「山の恩恵に感謝する」という言葉は、実は2000年近く続いてきた感覚を、現代の法律の言葉に置き換えたものだと言えるからです。

山そのものが神様である

日本の神社には、社殿を持たず山そのものをご神体として祀るところがあります。最も有名なのが奈良県の大神神社で、背後にそびえる三輪山が神の宿る山とされ、本殿を設けず拝殿から山を拝みます。

このように神が鎮まる山を神奈備(かんなび)と呼びます。人が立ち入ってはならない領域であり、木を切ることも禁じられてきました。山を神域として保護する感覚が、結果として日本の森を守ってきた面もあります。

山の神という存在

日本神話には山を司る神が登場します。代表が大山祇神(おおやまつみのかみ)です。伊邪那岐命と伊邪那美命の子として生まれ、木花咲耶姫の父としても知られる、山の総元締めというべき神様です。

また、火の神カグツチが父に斬られた際、その亡骸から8柱の山の神が生まれたという神話もあります。山の頂、斜面、奥山、谷、裾野といった地形のひとつひとつに神が宿るという発想です。

山で修行する人々

山に分け入って修行し、超人的な力を得ようとしたのが修験道であり、その実践者が山伏です。険しい山を歩き、滝に打たれ、山と一体になることで力を得る。この信仰は、山を単なる自然物ではなく、人を変える力を持った場と見ていたことを示しています。

山伏の姿から生まれた天狗の伝承も、山という異界への畏れが形になったものです。

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お盆の直前に山の日があるという偶然

ここで、当サイトならではの視点をお伝えしたいと思います。山の日は8月11日、お盆の入りは8月13日。この2日違いという配置は、日本の信仰から見ると驚くほど筋の通った並びなのです。

民俗学には山中他界観(さんちゅうたかいかん)という考え方があります。亡くなった人の魂は、遠い天上や地底ではなく、里から見える山に留まって子孫を見守っているという日本古来の死生観です。

この考え方によれば、祖先の霊は年月を経てご先祖様という大きな存在に溶け込み、山の神となります。そして春には田の神として里に降りて稲の実りを見守り、秋の収穫が終わると再び山へ帰っていく。お盆に祖先が帰ってくるというのも、この山からの往来として理解されてきました。

時期祖霊の居場所呼び名
冬から春先山にいる山の神
春から秋里に降りて田を見守る田の神
お盆家に帰ってくるご先祖様
正月家に帰ってくる年神様

つまり、山を敬う日の2日後に祖先を迎える日が来るという8月の並びは、山にいる祖先を思い、その祖先を家に迎えるという流れとして読むことができるのです。祝日を決めた人々がここまで意図したわけではないでしょう。しかし結果として、日本人の古い信仰の順序をなぞる配置になったのは、実に興味深い偶然です。

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山開きという神事

山の日にちなんで知っておきたいのが山開きです。夏山シーズンの始まりに、登山道の安全を祈願して行われる行事で、多くは神職を招いた神事として営まれます。

山開きという言葉には、それまで山は閉じていたという前提があります。かつて山は神域であり、誰もが自由に入ってよい場所ではありませんでした。決められた時期に、祈りを捧げたうえで、はじめて足を踏み入れることが許される。この感覚が山開きという言葉に残っているのです。

富士山の山開きでは、今も浅間神社で神事が営まれます。登山が趣味として広まった現代でも、山に入る前に手を合わせるという作法が受け継がれていることは、日本人と山の関係を示す好例だと思います。

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筆者の考察

山の日は、2016年に始まったばかりの新しい祝日です。歴史が浅く、何をする日なのかもはっきりしない。そう感じている方は多いでしょう。

しかし筆者は、この祝日の趣旨に置かれた「山の恩恵に感謝する」という言葉に注目したいと思います。この一文は、2000年にわたって日本人が続けてきたことを、現代の法律の言葉に翻訳したものだからです。

山を神として拝み、水源として敬い、木を伐るときには山の神に許しを請い、猟をするときには獲物を授かったことに感謝する。日本人は山に対して、常に受け取る側として振る舞ってきました。国土の7割が山であり、その山が水を生み、木を育て、平野に流れる川となって田を潤す。この列島に暮らす限り、山への感謝は抽象的な理念ではなく、生活の実感そのものだったのです。

そして、この祝日の日付が航空機事故への配慮によって決まったという経緯も、忘れずにおきたいところです。山は恵みをもたらすと同時に、人を寄せつけない厳しさも持っています。畏れと感謝は、日本の信仰においてつねに一組でした。山の日という新しい祝日は、その古い感覚を思い出すための日なのだと考えると、この日の意味がすっと腑に落ちるように思います。

今年の8月11日は、遠くの山並みを眺めてみてください。あの向こうに、私たちを見守るご先祖様がいるのかもしれません。

まとめ

山の日は、2014年の祝日法改正で定められ、2016年から施行された日本で16番目の国民の祝日です。趣旨は「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」こと。8月に祝日がなかったこと、夏山シーズンであることから8月に置かれました。

当初は8月12日が有力でしたが、日本航空123便墜落事故の日であることへの配慮から11日となりました。日本には山そのものを神として祀る神奈備の信仰があり、大山祇神をはじめとする山の神々、修験道の修行、山開きの神事など、山を敬う文化が深く根づいています。

そして山中他界観によれば、祖先の霊は山にいて子孫を見守るとされます。山の日の2日後にお盆が始まるという8月の並びは、山にいる祖先を思い、その祖先を家に迎えるという流れとして読むことができるのです。

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祓え給い、清め給え

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