アメノウズメノミコト(天宇受売命、あめのうずめのみこと)は、日本神話において芸能の神として広く知られています。特に、彼女が天照大御神(あまてらすおおみかみ)を天岩戸から引き出すために行った勇敢で機知に富んだ踊りは、神話の中でも最も有名なエピソードの一つです。アメノウズメノミコトのこの行動により、世界に再び光が戻り、彼女は芸能や祭りの守護神として深く信仰されるようになりました。本記事では、彼女の神話での活躍や信仰について詳しく解説します。
神話での活躍
天岩戸神話
アメノウズメノミコトの最も有名なエピソードは、天岩戸(あまのいわと)神話です。『古事記』や『日本書紀』によれば、天照大御神は弟の須佐之男命(すさのおのみこと)の乱暴な行動に激怒し、天岩戸という洞窟に隠れてしまいました。これにより、世界は暗闇に包まれ、神々や人々は大いに困惑しました 。
神々は天岩戸の前に集まり、天照大御神を外に出すために様々な策を講じました。その時、アメノウズメノミコトが「岩戸開き」の計画を提案し、自らその役を引き受けました。彼女は桶の上に立ち、舞を踊り始めました。この踊りは非常に滑稽で、衣服をはだけ、足を打ち鳴らしながら踊ることで、神々を笑わせました。
神々の大笑いに釣られて、天照大御神は岩戸を少し開けて外の様子を窺いました。すると、天手力男神(あめのたぢからおのかみ)がその隙に岩戸を開け放ち、天照大御神を引き出しました。このことで、世界に再び光が戻り、アメノウズメノミコトは天照大御神を岩戸から引き出した立役者として、重要な存在となりました。
邇邇芸命(ににぎのみこと)の天孫降臨、猿田彦大神との関係
また、アメノウズメノミコトは、邇邇芸命(ににぎのみこと)の天孫降臨の際に登場します。彼女は猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)が邇邇芸命を導くために現れたとき、その正体を尋ねる役割を担いました。その後、猿田彦大神の導きで無事に地上に降り立った邇邇芸命を送り届けることになります。猿田彦大神との関わりにより、アメノウズメノミコトの一族・子孫は猿女君(さるめのきみ)として仕えるようになりました。
猿女君(さるめのきみ)とは
猿女君(さるめのきみ)は、天宇受売命(あめのうずめのみこと)の後裔であり、神楽(かぐら)などの儀式において芸能や祭祀を担当する一族を指します。この名称は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を天岩戸から引き出す際に重要な役割を果たしたアメノウズメノミコトに由来しています。猿女君は、主に神楽や舞踊を通じて神を慰め、祀りを行う役割を担っています。猿女君は、神楽や舞踊などの神事において、神々を楽しませる芸能や儀式を執り行う役割を持っています。特に神楽は、神話のエピソードに基づく舞踊や音楽を通じて、神々の意向を和らげ、祈願や感謝を捧げる重要な儀式です。猿女君はこれらの儀式の担い手として、神社や宮中での祭祀において重要な役割を果たしました。
信仰とご利益
アメノウズメノミコトは、日本の伝統芸能、舞踏、祭りの神として信仰されています。彼女の踊りが神々を喜ばせ、天照大御神を岩戸から引き出したことから、以下のようなご利益があるとされています。
芸能上達: 芸能や舞踏に携わる人々から、技術の向上や成功を祈願されます。
祭りの守護: 祭りや祝い事の安全と成功を祈願するために信仰されています。
開運: 困難な状況を打開し、運を開く力を持つ神として崇められています。
アメノウズメを祀る神社
アメノウズメノミコトは、日本各地の神社で祀られています。代表的な神社には以下があります。
椿大神社(つばきおおかみやしろ)(三重県鈴鹿市)
椿大神社(つばきおおかみやしろ)では、猿田彦大神と共に祀られ、芸能や道開きの神として信仰されています。
太秦広隆寺(うずまさこうりゅうじ)(京都府京都市)
太秦広隆寺(うずまさこうりゅうじ)では、アメノウズメノミコトの芸能の神としての側面が強調される神社です。
天河大弁財天社(てんかわだいべんざいてんしゃ)(奈良県吉野郡)
天河大弁財天社(てんかわだいべんざいてんしゃ)は、芸能の神として信仰され、多くの芸能関係者が訪れます。
まとめ
アメノウズメノミコトは、天照大御神を岩戸から出すための滑稽な踊りで知られる、日本神話における重要な芸能の神です。彼女の活躍により、神楽や日本の伝統芸能の原型が生まれ、祭りや芸能の成功を祈願する神として広く信仰されています。その信仰は、日本の文化と伝統に深く根ざしており、芸能上達や祭りの守護として、多くの人々に崇められています。