同和利権とは?政府が1986年に認めた弊害|窓口一本化・確認糾弾・えせ同和行為

同和利権とは?政府が1986年に認めた弊害|窓口一本化・確認糾弾・えせ同和行為

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祓え給い、清め給え

同和利権という言葉には、2つの受け取り方があります。公金をめぐる不正を指す言葉として使う人と、差別を正当化するための口実だと批判する人です。

このページでは、どちらかの立場に立つのではなく、公的な文書と裁判の判決で確認できることだけを並べます。意外に思われるかもしれませんが、それで十分に話が通ります。この問題の弊害を最初に公式に認めたのは、批判する側の民間ではなく、政府自身だったからです。

1986年12月、政府の地域改善対策協議会は意見具申を出し、同和行政が抱える弊害を名指しで列挙しました。窓口一本化の問題、民間運動団体の行き過ぎた言動、行政の主体性の欠如、そしてえせ同和行為です。批判の骨格は、この政府文書の時点ですでに出揃っていました。

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最初に、団体と政党の関係を整理します

この話題はよく誤解されています。「左派政党が一体となって利権を守ってきた」という理解を見かけますが、実態は逆で、関係団体同士が激しく対立してきました。

団体政治的な系列同和利権への立場
部落解放同盟旧社会党系批判される側。個人の不正を全体の問題にすりかえていると反論しています
全国部落解放運動連合会(現在の全国地域人権運動総連合)共産党系解放同盟の利権を強く批判してきた側です
自由同和会自民党系解放同盟とは別系統の団体として活動しています

日本共産党は、同和事業を私物化して利権をあさってきたとして部落解放同盟を名指しで批判しています。党の公式な解説にその記述があります。つまり共産党はこの問題で批判する側であり、利権を守る側ではありません。

対立は言論の範囲を超えたこともありました。1974年11月、兵庫県の八鹿高校で、解放同盟側の活動家らが教職員を長時間にわたって監禁し暴行を加えた事件が起きています。被害を受けたのは共産党系の教職員らでした。この事件は刑事事件として起訴され、有罪判決が確定しています。

ここを正確に押さえておかないと、議論が成り立ちません。同和利権の批判は、右派からだけでなく、左派の内部からも長く行われてきたものです。

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1986年、政府が弊害を公式に認めた

1969年に始まった同和対策事業は、住環境の格差を大きく改善しました。それは事実です。一方で、17年が経った1986年12月、政府の地域改善対策協議会は意見具申を出し、新たに生じた課題を列挙しました。

指摘された課題内容
行政の主体性の欠如行政が自ら判断せず、運動団体の意向に追随する傾向があるという指摘です
窓口一本化の弊害特定の団体を経なければ事業を受けられない運用が生じていました
民間運動団体の行き過ぎた言動威圧的な言動が、かえって問題解決を妨げているという指摘です
えせ同和行為同和を名乗って利益を得ようとする行為の横行です
自立・向上の視点の欠如支援が依存を生む構造になっているという指摘です

これは反対派の主張ではなく、同和行政を進めてきた政府側の協議会が出した文書です。同和利権という言葉を使わずとも、その内容はこの時点で公式に認められていたことになります。

1996年には再び意見具申が出され、特別対策を終了して一般対策へ移行する方向が示されました。そして2002年3月末、特別法は失効します。

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窓口一本化とは何だったのか

この問題の中心にあるのが窓口一本化です。仕組みを理解しておくと、なぜ利権が生まれたのかが見えてきます。

同和対策事業を行うには、誰が対象者なのかを決めなければなりません。ところが、対象者であるかどうかは戸籍で確かめるようなものではありません。そこで一部の自治体は、運動団体を窓口として、団体を経由した申請を受け付ける運用をとりました。

結果として生じたのが次の状況です。

  • 団体に属さなければ事業の対象になりにくい
  • 団体が事実上、受給資格の判定に関わる
  • 公金の配分に団体の意向が影響する
  • 行政は団体と対立しにくくなる

筆者が同和利権の核心だと考えるのは、ここです。悪意のある人がいたという話ではありません。行政が「誰が当事者か」を判断する責任を、民間団体に委ねてしまったという制度設計の問題です。

判断を外に出せば、その判断を握った側に力が集まります。1986年の意見具申が最初に挙げた課題が「行政の主体性の欠如」だったのは、政府もそこが起点だと見ていたからでしょう。

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確認・糾弾という手法

差別的な言動があったとされる個人や企業を呼び出し、関係者が集まる場で追及する手法が行われてきました。確認・糾弾と呼ばれます。

目的は差別の是正と教育であるとされますが、長時間にわたる追及や謝罪の要求が人権侵害にあたるという批判が繰り返し出されました。1986年の意見具申が「民間運動団体の行き過ぎた言動」を課題に挙げたのは、この手法も含まれます。

問題は効果の面にもあります。追及されることを恐れる心理が広がれば、人は同和問題そのものを避けるようになります。触れないのが安全だという空気が生まれれば、差別は意識の中に残ったまま、話題にできないという形で温存されます。

この「怖いから触れない」という空気が、次に説明するえせ同和行為の土台にもなりました。

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えせ同和行為、対立する双方が批判している問題

この問題の特徴は、立場の違う双方が揃って批判しているという点です。法務省が啓発と相談の対象としている一方で、部落解放同盟の系列にある部落解放・人権研究所も、自らの用語解説でこれを厳しく批判しています。

同研究所の説明は、要点をこう述べています。部落問題の解決に努力していないのに装い、同和の人は怖いという世間の差別意識を逆手に取って利権をあさるニセの団体であり、部落問題の解決を遅らせる妨害団体である、と。

どのような手口なのか

手口内容
図書の押し売り同和関係の資料や書籍を高額で購入させます
研修会の強要企業に対し同和問題の研修会の開催を求め、講師をあっせんします
入札への介入公共事業の入札に介入します
示談の引き受け交通事故などの示談交渉を引き受けます
寄付や賛助金の要求団体への協力金の名目で金銭を求めます

なぜ1980年代に急増したのか

ここに具体的な経緯があります。1982年10月に施行された改正商法によって、株主総会で金銭を得ていた総会屋が企業から締め出されました。その一部が、同和の名を使った新たな手口へ移ったとされています。

法務省人権擁護局が1987年4月に公表した数字では、えせ同和団体は640団体を上回るとされました。団体名に全国や日本と付いていながら、実態は数人のグループというものが多いという指摘もあります。

つまりこれは、同和問題そのものから生まれた問題というより、企業を相手にした金銭要求の手口が、規制強化によって看板を替えた結果でもありました。

最大の被害者は誰なのか

えせ同和行為の被害として語られるのは、通常は金銭を要求された企業です。ただ、筆者はもう1つの被害を重く見ています。

この手口が成り立つ条件は「同和は怖い」という偏見です。偏見を燃料にして金を取り、取られた側はますます「やはり怖い」と思う。偏見が強まるほど手口が効くので、この行為は差別を必要としています。

その結果として偏見を浴びるのは、実際にその地域に暮らし、何も関わっていない人たちです。だから部落解放・人権研究所がこれを「解決を遅らせる妨害団体」と呼ぶのは、言葉のうえの非難ではなく実害の指摘だと思います。差別を利用して稼ぐ行為の最大の被害者は、差別される側なのです。

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判決で認定された不正の例

公金をめぐる不正については、報道だけでなく判決が出ている事例があります。代表的なものを挙げます。

年事例結果
1974年兵庫県の高校で教職員が監禁・暴行された事件刑事事件として起訴され、有罪判決が確定しました
2006年大阪市で、市から委託された駐車場事業の収入が横領された事件業務上横領などで起訴され、有罪判決が出ています
2006年奈良市で、職員がほとんど出勤せず給与を受け取っていた問題懲戒免職となり、刑事訴追にも至りました

これらの事件が同和行政の全体像だと考えるのは、正確ではありません。33年にわたり全国で行われた事業のなかの個別の事件です。そして、この点こそが次に述べる論争の核心でもあります。

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『同和利権の真相』をめぐる論争

2002年3月、宝島社から『同和利権の真相』が刊行されました。寺園敦史、一ノ宮美成、グループK21らによる調査報道で、シリーズは累計50万部前後に達したとされます。

同書の立場は、同和対策事業が被差別部落の状態を改善したのは事実だが、莫大な公金が投入される中でそれが利権を生み、腐敗の温床になった、というものでした。

解放同盟側の反論

2003年4月、部落解放同盟中央本部は機関紙で見解を発表します。主張の要点は2つです。部落に属する個人の汚職を不当に一般化して、組織や出身者全体の問題にすりかえている。そして批判の論調が共産党系メディアをなぞっており、差別キャンペーンである、というものでした。

2004年1月には、解放出版社から反論本『「同和利権の真相」の深層』が刊行され、宮崎学、呉智英らが執筆しています。こちらは、同書が部落が差別されてきた現実を無視しているという批判を展開しました。

裁判になった部分

この論争は訴訟にも発展しました。寺園は『深層』において論争から逃げていると書かれ名誉を傷つけられたとして提訴し、2005年5月、大阪地裁は宮崎学の記述を虚偽と認定して、宮崎学と解放出版社に110万円の賠償を命じました。ただし出版の差止請求は退けられています。同年12月の大阪高裁でも同趣旨で被告側が敗訴し、賠償額を減額した80万円が確定しました。

なお『同和利権の真相』は、共産党系とされる全解連についても、解放同盟ほどではないが補助金受給などの恩恵を受けている地域があると批判しています。執筆者の寺園は共産党系の新聞の元記者ですが、批判の矛先は共産党系の団体にも向いていました。

この論争をどう読むか

解放同盟側の反論には、無視できない正当性があると筆者は考えます。個人の不正を集団全体の性質として語ることは、まさに差別の論法そのものです。「同和は不正をする」という一般化は、「同和は怖い」というえせ同和行為の燃料と、構造が同じです。

同時に、不正が起きた事実とその仕組みを検証することは、集団への非難とは別の作業です。問われているのは、公金の配分の判定を民間団体に委ねた制度であって、そこに暮らす人々の性質ではありません。

この2つを分けて語れるかどうかが、この話題を扱うときの分かれ目だと思います。分けずに語れば、批判は差別になり、擁護は検証の拒否になります。

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2002年以降、何が残ったのか

特別法は2002年3月末に失効し、特別対策は一般対策へ移行しました。ただし議論は終わっていません。

論点内容
人権条例による継続特別法の失効後も条例や人権啓発の名目で実質的に事業が続いているという批判があります
2016年の部落差別解消推進法理念を定めた法律です。実態調査の規定について、かえって地区の特定につながる懸念も指摘されました
インターネット上の拡散地名の一覧がネット上に出回る問題が、新たな課題になっています

3つめは特に深刻です。かつて差別の道具になったのは行政が作った戸籍や調査資料でしたが、現在はそれがネット上に転載される形で問題が再生産されています。2021年と2023年の裁判所の判断は、地名の一覧の公開に差止めを命じるものでした。

よくある質問

同和利権は実在したのですか

公金の配分をめぐる不正が起き、有罪判決が出た事例があります。また1986年の政府の意見具申が、窓口一本化の弊害や行政の主体性の欠如を公式に指摘しています。一方で、それを集団全体の性質として語ることには批判があります。

共産党は利権を守ってきた側ですか

逆です。日本共産党は部落解放同盟を名指しで批判してきた側で、1974年の事件では共産党系の教職員が被害を受けています。ただし『同和利権の真相』は、共産党系の団体にも補助金の恩恵を受けている地域があると批判しています。

えせ同和行為を受けたらどうすればよいですか

法務省がえせ同和行為に関する相談を受け付けており、各地の法務局に人権相談の窓口があります。安易に応じず、記録を残して相談するのが基本です。

特別法はなぜ終わったのですか

住環境の格差が大きく改善され、特別対策を続ける必要性が薄れたことと、特別扱いを続けること自体が問題を固定するという判断からです。1996年の意見具申が一般対策への移行を示し、2002年3月末に失効しました。

確認・糾弾は今も行われているのですか

行政機関の関与については慎重な立場が示されてきました。手法そのものへの人権侵害の批判は、1986年の意見具申以降も繰り返されています。

まとめ

同和利権の問題は、陰謀や隠蔽の話ではありません。政府自身が1986年に公式文書で弊害を列挙し、法務省がえせ同和行為に警告を出し、裁判所が個別の不正に有罪判決を出してきました。記録はすべて表に出ています。

そして根にあったのは、行政が「誰が当事者なのか」という判断を自ら手放したことでした。判断を外部に委ねれば、委ねられた側に力が集まる。これは同和行政に限った話ではなく、人権を根拠に要求が通る仕組みを作るときに、いつでも起こりうることです。

最後に1つ、どうしても書いておきたいことがあります。この問題を語るとき、「同和は得をしている」という形に落とし込むのは、差別を利用して稼いだ側の論法に乗ることになります。えせ同和行為が成り立った条件は「同和は怖い」という偏見でした。偏見を強めることは、あの手口を使った人々を助けることでしかありません。

制度の失敗は制度の言葉で検証する。人を属性で語らない。この2つを守れば、この話題はきちんと議論できるはずです。

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祓え給い、清め給え

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この記事を書いた人

日本神話と歴史
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