神社の建築様式一覧|神明造・大社造・住吉造の違いと、千木で男神女神がわかるは本当か

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神社の屋根の上に、交差した木が空へ突き出ているのをご覧になったことがあると思います。千木(ちぎ)といいます。その手前には、丸太のような木が横向きに並んでいます。鰹木(かつおぎ)です。
この千木の切り方を見れば、男の神様か女の神様かがわかる。そう聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。
ところが、伊勢の神宮では少し困ったことになります。内宮の天照大御神も、外宮の豊受大御神も、どちらも女神とされています。それなのに、二つの正殿では千木の切り方が正反対なのです。
この記事では、神社建築の見どころを部位ごとに整理し、神明造、大社造、住吉造をはじめとする主な様式を一覧にします。参拝したときに実際に見て確かめられるよう、見分け方も添えました。
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まず、屋根の上の部品から

千木(ちぎ)
屋根の両端で交差し、そのまま上へ突き出ている板を千木といいます。もとは屋根の端を押さえるための構造材だったものが、装飾として残ったと考えられています。
先端の切り方には二種類あります。地面に対して垂直に切るのが外削ぎ(そとそぎ)、水平に切るのが内削ぎ(うちそぎ)です。外削ぎは切り口が空を向かず、内削ぎは切り口が空を向いている、と覚えると見分けやすいと思います。
鰹木(かつおぎ)
屋根の一番高い部分に、横向きに並べられた円柱状の木が鰹木です。形が鰹節に似ていることからこの名があります。こちらも本来は屋根を押さえる役目を持っていたとされます。
本数は社によって異なります。伊勢の神宮の内宮正殿は10本、外宮正殿は9本です。
「千木で男神か女神かわかる」は俗説です
ここが、この記事でまずお伝えしたい点です。
外削ぎは男神、内削ぎは女神。鰹木が奇数なら男神、偶数なら女神。この説は広く流布していますが、俗説とされています。実際には、男神を祀る社にも女神を祀る社にも、外削ぎが使われている例が数多くあります。
もっともわかりやすい反例が、伊勢の神宮です。
| 観点 | 内宮(皇大神宮) | 外宮(豊受大神宮) |
|---|---|---|
| 御祭神 | 天照大御神。女神とされます | 豊受大御神。女神とされます |
| 千木 | 内削ぎ | 外削ぎ |
| 鰹木 | 10本。偶数です | 9本。奇数です |
| 俗説に当てはめると | 女神の様式 | 男神の様式になってしまいます |

さらに興味深いのは、この違いが正殿だけの話ではないことです。神宮を構成する125の社では、内宮に属する社はすべて内削ぎと偶数の鰹木、外宮に属する社はすべて外削ぎと奇数の鰹木で統一されています。御祭神の性別とは関係なく、系統によって揃えられているのです。
つまり千木と鰹木は、神様の性別を示す記号ではなく、その社がどの系統に属するかを示す印として機能してきた、と考えるほうが実態に合います。

筆者は、この俗説が広まった理由も理解できると思っています。目に見える形で男女を読み取れたら面白いからです。ただ、面白い説ほど確かめたほうがよい。参拝先の御祭神を調べたうえで屋根を見上げると、説が当てはまらない社にすぐ出会えます。
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入口の位置で、大きく二つに分かれます
様式を見分ける第一歩は、建物のどちら側に入口があるかです。
切妻屋根の建物には、二つの面があります。屋根が流れ落ちてくる長い側と、三角形に見える短い側です。長い側から入るのを平入(ひらいり)、三角の側から入るのを妻入(つまいり)といいます。
| 入口の向き | 見え方 | 代表的な様式 |
|---|---|---|
| 平入 | 正面から見ると屋根が横に長く広がります | 神明造、流造、八幡造 |
| 妻入 | 正面から見ると屋根が三角に見えます | 大社造、住吉造、春日造 |
参拝のときは、まず正面に立って屋根の形を見てください。三角が正面を向いていれば妻入です。これだけで、候補が半分に絞れます。
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もっとも古いとされる三つの様式
神明造、大社造、住吉造。この三つが、仏教建築の影響を受ける前からの形を伝えるとされています。
| 観点 | 神明造 | 大社造 | 住吉造 |
|---|---|---|---|
| 代表 | 伊勢の神宮 | 出雲大社 | 住吉大社 |
| 入口 | 平入 | 妻入 | 妻入 |
| 屋根の反り | 反りがありません | 反りがあります | 反りがありません |
| 屋根材 | 茅葺 | 檜皮葺 | 檜皮葺 |
| 色 | 素木のまま | 素木のまま | 柱は朱、壁は白 |
| 内部 | 一室 | 心御柱を中心に区切られます | 内陣と外陣の二室 |
| もとの形 | 高床の倉が近いとされます | 古代の住居が近いとされます | 諸説あります |
神明造 倉の形を伝えています

神明造は、伊勢の神宮の正殿に代表される様式です。柱は礎石を使わず地面に直接立てる掘立柱、屋根は茅葺、木は塗装をしない素木。建物の前後には、屋根の棟を直接支える棟持柱が立ちます。
この様式では、千木は屋根の端の板がそのまま延びて突き出た形になっています。後の時代の様式では、千木を屋根の上に載せる形が多くなりますので、そこも見分けの手がかりです。
大社造 入口が正面の右に寄っています

大社造は、出雲大社の御本殿に代表される様式です。ここには、他では見られない特徴がいくつもあります。
まず平面です。心御柱(しんのみはしら)と呼ばれる中央の柱を中心に、9本の柱が田の字の形に並んだ、ほぼ正方形の構造をしています。
そして入口。正面の中央ではなく、右側に寄せて設けられています。入ってすぐの正面には板壁が立てられ、内部が直接見えないようになっています。
さらに驚かされるのが、御神座の向きです。参拝者は南から拝みますが、大国主大神の御神座は南を向いていません。西を向いておられます。つまり正面から拝んでいる人は、神様の横顔に向かって手を合わせていることになります。

この配置について、筆者は住まいの構造がそのまま残ったものだと考えています。人の家であれば、入口は端にあり、入ってすぐ奥が見えないようにし、主人は壁を背にして座ります。神明造が倉の形を伝えているのに対し、大社造は住居の形を伝えている。神を建物に迎えるとき、古代の人は自分たちの家の作りをそのまま当てはめたのでしょう。
住吉造 直線と朱色

住吉造は、大阪の住吉大社に伝わる様式です。屋根に反りがなく、直線で構成されているのが特徴で、この点は神明造と共通します。
一方で、柱は朱塗り、壁は白という彩色が施されています。素木を貫く神明造や大社造とは、印象がかなり異なります。内部は前後二室に分かれ、手前を外陣、奥を内陣とします。
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数のうえで多いのは、実は別の様式です
三大様式という言い方をしましたが、全国の神社の本殿を数えたとき、最も多いのはこれらではありません。
流造 全国で最多の様式
流造(ながれづくり)は、神明造から発展したとされる様式です。平入の切妻屋根の、正面側だけを長く伸ばして庇としています。横から見ると、屋根の前側だけがなだらかに流れ落ちる形になります。この流れが名前の由来です。
お住まいの近くの神社を思い浮かべてみてください。正面の屋根が長く伸びて、その下に参拝する場所がある。おそらく多くの方が、この形を思い浮かべるはずです。それが流造です。
春日造 朱塗りで小ぶり
春日大社に代表される様式で、流造に次いで数が多いとされます。妻入の切妻屋根に、正面へ庇を付けた形です。多くは朱塗りで、規模は小ぶりなものが目立ちます。
主な様式の一覧
| 様式 | 読み | 入口 | 代表的な社 | 見分けの手がかり |
|---|---|---|---|---|
| 神明造 | しんめいづくり | 平入 | 伊勢の神宮 | 直線的な屋根、茅葺、素木、棟持柱 |
| 大社造 | たいしゃづくり | 妻入 | 出雲大社 | 正方形の平面、入口が右寄り |
| 住吉造 | すみよしづくり | 妻入 | 住吉大社 | 反りのない屋根、朱の柱と白い壁 |
| 流造 | ながれづくり | 平入 | 賀茂の社など、全国に多数 | 正面の屋根だけが長く伸びます |
| 春日造 | かすがづくり | 妻入 | 春日大社 | 妻入に庇を付けた小ぶりな形、朱塗り |
| 八幡造 | はちまんづくり | 平入 | 宇佐神宮、石清水八幡宮 | 二棟が前後に連なっています |
| 日吉造 | ひえづくり | 平入 | 日吉大社 | 背面の庇が途中で途切れます |
| 権現造 | ごんげんづくり | 平入 | 日光東照宮、北野天満宮 | 本殿と拝殿を石の間でつなぎます |
| 浅間造 | せんげんづくり | 平入 | 富士山本宮浅間大社 | 社殿が二階建てになっています |

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後の時代に生まれた様式は、性格が変わります
一覧の下のほうに並ぶ様式には、古い三様式とは異なる特徴があります。建物が大きく、複雑になっているのです。
権現造がその典型です。神様がおられる本殿と、人が拝む拝殿を、石の間と呼ばれる低い部屋でつなぎ、全体をひとつの建物にまとめています。日光東照宮がよく知られていますが、様式としては北野天満宮のほうが古い例にあたります。

ここに、時代の変化が表れていると筆者は考えます。古い様式では、本殿はあくまで神様の住まいであり、人が立ち入る場所ではありませんでした。ところが時代が下るにつれ、人が祈る空間が必要になり、それが建物として本殿に接続されていきます。
神様と人の距離が、建築に現れているわけです。離れていたものが、だんだん近づいて、ついにはひと続きの屋根の下に入った。そう見ることもできます。

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参拝のときに見ていただきたい五つの点
実際に神社へ行ったとき、次の順に見ていくと様式が絞り込めます。
| 見る順番 | 確かめること | わかること |
|---|---|---|
| 1 | 正面から見て屋根が三角か、横に長いか | 妻入か平入かが決まります |
| 2 | 屋根が反っているか、直線か | 直線なら神明造か住吉造の系統です |
| 3 | 柱が素木か、朱塗りか | 朱塗りなら住吉造や春日造の系統です |
| 4 | 正面の屋根だけが長く伸びていないか | 伸びていれば流造の可能性が高くなります |
| 5 | 本殿と拝殿がつながっているか | つながっていれば権現造です |
なお、多くの神社では拝殿が手前に建っているため、本殿の全体は見えません。横や斜め後ろに回れる場合は、そこから屋根の形を確かめるとわかりやすくなります。立ち入りが制限されている区域には入らないよう、お気をつけください。
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筆者の考察 屋根の形は、神との距離の表れです
様式を並べてみて気づくのは、古いものほど建物が単純で、人の入る余地がないという点です。
神明造は倉、大社造は住居。どちらも、もとは人が使っていた建物の形です。神を迎えるとき、古代の人は特別な形を発明したのではなく、自分たちが知っている最良の建物をそのまま差し出しました。大切な穀物を納める倉と、一族の長が座る家。神にふさわしいと思えたのが、この二つだったのでしょう。
そして時代が下ると、建物は大きく、飾りが増え、人が祈る空間が組み込まれていきます。信仰が広がり、多くの人が関わるようになった結果です。悪いことではありません。ただ、最初の形がどうだったかを知っておくと、神社の見え方が変わります。
屋根の上の千木を見上げるとき、あれが何を意味しているのかを断定できなくてもかまわないと思います。むしろ、性別の記号だという説明が当てはまらない社に出会ったときこそ、その社の来歴を調べたくなる。そういうきっかけとして、建築は優れた入口です。
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神社建築についてよくある質問
千木で男神か女神かを見分けることはできないのですか
目安にはなりますが、確実ではありません。伊勢の神宮のように、御祭神がどちらも女神でありながら様式が分かれている例があります。参考程度にとどめ、御祭神は案内板や公式の資料で確かめるのが確実です。
本殿と拝殿は何が違うのですか
本殿は御神体を納め、神様がおられる建物です。拝殿は、人が参拝や祭祀を行うための建物です。通常、参拝者が前に立って手を合わせるのは拝殿であり、本殿はその奥にあります。本殿を持たず、山や岩そのものを御神体とする神社もあります。
神社の屋根はなぜ反っているものと直線のものがあるのですか
屋根の反りは、大陸から伝わった建築の影響とされています。神明造や住吉造のように反りのない形は、その影響を受ける前の姿を残していると考えられています。反っているかどうかは、様式の古さを推し量る手がかりのひとつです。
出雲大社の神様が西を向いているのはなぜですか
理由については諸説があり、確定していません。海の方角を向いているとする説、古い住まいの座の位置がそのまま残ったとする説などがあります。いずれにせよ、参拝者の正面と御神座の向きが一致しないという点は、この社の大きな特徴です。
近所の神社の様式を調べるにはどうすればよいですか
境内の案内板に記載されていることがあります。文化財に指定されている社殿であれば、その説明板に様式名が書かれている場合がほとんどです。記載がない場合は、この記事の見分け方を手がかりに、屋根の形と入口の向きから推定してみてください。

まとめ
千木の切り方や鰹木の数で神様の性別がわかるという説は、俗説とされています。伊勢の神宮では、内宮も外宮も女神を祀りながら、様式が正反対です。性別ではなく、系統によって揃えられているのです。
様式を見分ける第一歩は、入口が平入か妻入かです。そのうえで屋根の反りと色を見れば、神明造、大社造、住吉造、流造、春日造といった主な形が絞り込めます。
古い様式ほど、倉や住居といった人の建物に近い形をしています。神を迎えるために、自分たちがもっとも大切にしていた建物を差し出した。神社の屋根を見上げると、そのことが今も見えてきます。







