日本書紀とは?書いた人、1巻~30巻の内容、時代背景を解説

日本書紀は、720年に編纂された日本最古の公式歴史書で、神代から推古天皇に至るまでの日本の歴史が記録されています。全30巻にわたる日本書紀は、天地開闢から神々の活動、日本列島の形成、そして天皇を中心とした歴史を詳細に描写し、天皇の正統性と国家の成り立ちを示す重要な資料です。本記事では、日本書紀を編纂した人物やその内容、日本書紀が編纂された時代背景、そして古事記との違いについて詳しく解説します。

日本書紀とは?日本最古の歴史書の概要

日本書紀(にほんしょき)は、日本で現存する最古の公式歴史書であり、720年に編纂された書物です。全30巻から成るこの歴史書は、天地開闢(てんちかいびゃく)から始まり、神々の活動や日本列島の形成、そして天皇を中心とする日本の歴史が体系的に記されています。日本書紀は、神話や歴史を公式に記録する目的で編纂され、国家の成り立ちや天皇家の正統性を示す重要な資料として位置づけられています。

日本書紀を書いた人はだれか?(編纂)

日本書紀の編纂は、天武天皇の時代に計画が始まりましたが、完成したのはその後の元正天皇の時代です。編纂の中心人物は、天武天皇の皇子であり、学識と政治的手腕に優れた舎人親王(とねりしんのう)です。舎人親王は多くの学者や官僚と共に、日本の神話から歴史までを公式にまとめる作業を進めました。彼らは中国の歴史書を参考にしつつ、日本の正史を編纂することを目的としました。

日本書紀の編纂には複数の文献や伝承が使用されており、それらを比較・検討して選択的に記述が行われました。このため、日本書紀には神話的な物語と歴史的な事実が混在しており、異なる伝承が複数記述されている部分もあります。

日本書紀の内容とは?

日本書紀は、全30巻にわたり、神代から推古天皇までの歴史が詳述されています。

天地開闢と神々の時代

最初の巻では、宇宙の始まり、天地の創造、そして神々の誕生と活動が描かれています。天照大御神やスサノオ、オオクニヌシといった神々の物語が展開され、特に天皇家の祖先とされる神々の系譜が重要なテーマとなっています。古事記の場合には、天地の創造のことを天地開闢ではなく天地初発と表現しています。

天皇の時代

第2巻以降では、初代天皇である神武天皇から推古天皇に至るまでの天皇の系譜とその治世が記録されています。天皇がどのように国を統治し、国家が発展してきたかが詳述され、天皇家の正統性と権威を示すための物語が展開されています。

外国との交流

日本書紀では、日本の歴史だけでなく、朝鮮半島や中国との外交や軍事的な関係も記録されています。特に、百済、新羅、高句麗との交流や対立、唐との外交関係など、当時の日本がどのように国際的な立場を取っていたかが描かれています。

日本書記1巻から30巻の内容一覧

日本書紀の全30巻の概要を一覧表にまとめました。各巻で扱われている主な内容を記載しています。

巻数 内容概要
第1巻 天地開闢、神々の誕生(天地創造、天照大御神月読命須佐之男命の誕生)
第2巻 イザナギイザナミ国生みと神生み、黄泉の国の物語
第3巻 天照大神と須佐之男命の対立、須佐之男命の追放と八岐大蛇退治
第4巻 大国主命の活躍と国譲りの神話
第5巻 天孫降臨(瓊瓊杵尊の降臨)と葦原中国平定
第6巻 神武天皇の東征と即位(初代天皇による統一の物語)
第7巻 綏靖天皇から孝昭天皇まで(第2代から第5代天皇)の治世
第8巻 孝安天皇から孝元天皇まで(第6代から第8代天皇)の治世
第9巻 開化天皇の治世(第9代天皇)
第10巻 崇神天皇の治世(第10代天皇)、国の安定と邪馬台国との関連
第11巻 垂仁天皇の治世(第11代天皇)
第12巻 景行天皇の治世(第12代天皇)、日本武尊(ヤマトタケル)の物語
第13巻 成務天皇の治世(第13代天皇)
第14巻 仲哀天皇の治世(第14代天皇)、神功皇后の活躍(朝鮮半島への遠征)
第15巻 応神天皇の治世(第15代天皇)、百済との交流
第16巻 仁徳天皇の治世(第16代天皇)、大規模な土木事業と民生政策
第17巻 履中天皇から反正天皇まで(第17代から第18代天皇)の治世
第18巻 允恭天皇の治世(第19代天皇)、皇后の影響と宮廷内の権力闘争
第19巻 安康天皇の治世(第20代天皇)、皇位継承を巡る陰謀
第20巻 雄略天皇の治世(第21代天皇)、強力な中央集権化政策
第21巻 清寧天皇から顕宗天皇まで(第22代から第24代天皇)の治世
第22巻 仁賢天皇の治世(第25代天皇)
第23巻 武烈天皇の治世(第26代天皇)、暴政と滅亡
第24巻 継体天皇の治世(第27代天皇)、王朝交代の伝説
第25巻 安閑天皇から宣化天皇まで(第28代から第29代天皇)の治世
第26巻 欽明天皇の治世(第29代天皇)、仏教伝来と朝鮮半島との外交
第27巻 敏達天皇の治世(第30代天皇)、仏教を巡る政治的対立
第28巻 用明天皇から崇峻天皇まで(第31代から第32代天皇)の治世
第29巻 推古天皇の治世(第33代天皇)、聖徳太子の摂政としての活躍
第30巻 推古天皇の晩年、聖徳太子の死去とその後の政局

この一覧は、日本書紀に記された内容を巻ごとに大まかにまとめたものです。日本書紀は、神話から歴史までを網羅しており、特に天皇の系譜や治世についての記録が豊富です。

古事記と日本書紀の違い

項目 古事記 日本書紀
編纂の目的 日本神話や国の成り立ちを後世に伝えるために編纂され、神話や伝承に焦点を当てている。 日本の歴史を公式に伝えるために編纂され、国家としての正史を記録することを目的としている。
編纂時期と編纂者 天武天皇の時代に編纂の計画が始まり、712年に太安万侶によって編纂された。元明天皇に献上された。 天武天皇の時代に計画が始まり、実際に編纂が進められたのは天武天皇の死後しばらく経ってから。天武天皇の皇子である舎人親王らによって編纂され720年元正天皇の時代に完成した。
内容のスタイル 和文体で書かれており、日本語の音を用いて表現されている。 漢文体で記されており、中国の歴史書に近い書き方をしている。
内容の違い 神話を中心に感情豊かな物語としての側面が強調されている。 日本の正史として神話から歴史までを体系的に記述しており、多くの異伝や異説も併記されている。

古事記は、日本神話や国の成り立ちを後世に伝えることを目的とし、神話や伝承に焦点を当てて編纂されたのに対し、日本書紀は日本の歴史を公式に伝えるための国家の正史として編纂されました。編纂時期にも違いがあり、古事記は712年に太安万侶によって編纂され、日本書紀は720年に舎人親王らによって編纂されています。

また、内容のスタイルにも違いが見られ、古事記は和文体で書かれており、日本語の音を用いて感情豊かな物語が展開されるのに対し、日本書紀は漢文体で記述されており、中国の歴史書に近い形式で書かれています。内容も、古事記は神話を中心に描かれている一方で、日本書紀は神話から歴史までを体系的に記述し、異伝や異説を併記していることが特徴です。

日本書紀の時代背景

日本書紀が編纂された奈良時代は、日本が中央集権国家としての体制を整えつつあった時期です。天武天皇は国家の安定と統一を図り、天皇を中心とする国家の正当性を示すために歴史書を編纂することを計画しました。この背景には、中国や朝鮮半島との外交関係が影響しており、日本も他の東アジア諸国と同様に、正統な歴史書を持つことが国家の権威を高める手段とされていたのです。

また、仏教の影響や律令制度の整備も進んでいたこの時代に、国家の統治理念を神話と結びつけ、天皇を中心とした統治体制を確立することが目的とされました。日本書紀はこのような時代背景の中で、天皇制の正統性と日本国家の歴史を示すために編纂されたのです。

古事記・日本書紀の計画から完成までの時代と天皇

古事記と日本書記はどちらも天武天皇の命で計画されてきた書物ですが、その計画から長い期間をかけて編纂されてきたことがわかります。編纂の過程では天皇の代替わりもあり、当時のことを考えると、天皇の代替わりや、その周りの権力者、編纂に携わった人々も入れ替わりがあったことも考えられ、影響があったことは示唆されます。

40代目 天武天皇 テンム 673年~686年 飛鳥時代
41代目 持統天皇 ジドウ 690年~697年 飛鳥時代
42代目 文武天皇 モンム 697年~707年 飛鳥時代
43代目 元明天皇 ゲンメイ 707年~715年 飛鳥時代奈良時代
44代目 元正天皇 ゲンショウ 715年~724年 奈良時代

日本書記の内容は事実?

日本書紀の内容は、事実とされる部分と神話や伝承が混ざった部分が共存しています。日本書紀の冒頭には天地開闢(てんちかいびゃく)や神々の誕生が描かれており、これは神話として記録されたものです。一方で、天皇の系譜や政権の出来事、外国との外交などについては、ある程度の歴史的事実に基づく部分も含まれていますが、史実として確認できるかどうかには限界があります。また、日本書紀は国家の正統性を示す目的もあったため、天皇の権威を高めるために脚色された部分もあると考えられます。したがって、日本書紀は歴史書である一方、史実そのものとは異なる要素も含まれています。

まとめ

日本書紀は、日本最古の公式歴史書として、神話から歴史的事実までを体系的に記録した書物です。舎人親王を中心に編纂され、天皇を中心とした国家の正統性を示すための重要な資料として後世に影響を与え続けています。日本書紀は、中国の歴史書に倣った形式で編纂され、外交や軍事の記録も含まれており、日本の古代史を理解するために欠かせない存在です。また、古事記とは異なり、正史としての視点を持ち、公式の歴史書としての役割を果たしています。