瀬織津姫(せおりつひめ)は、日本神話に登場する清浄と浄化の神格で、主に水や川に関連した神様です。彼女は祓戸四神(はらえどししん)の一柱として知られ、穢れを祓い清める役割を持ちます。瀬織津姫は、主に川や水源の神社で祀られ、特に祓戸社や瀬織津姫神社などで信仰されています。彼女の神格は、浄化や癒しを求める人々にとって重要な存在となっています。
瀬織津姫(せおりつひめ)とは? 水と清浄の神
瀬織津姫は、古史古伝といわれる書物『ホツマツタヱ』にだけ名前が登場しています。また、「祓戸大神」という別名で知られています。この名前は、彼女が祓戸四神の一柱として、穢れを祓う役割を担っていることを示しています。祓戸四神は、穢れを清める神々で、瀬織津姫はその中でも特に水に関わる神として、「人の穢れを早川の瀬で浄める」とあり、川や海の力で浄化を司ります。
瀬織津姫の親神は伊邪那岐命と言われています。
祝詞・大祓詞(おおはらえのことば)での瀬織津姫(瀬織津比売)
『大祓詞(おおはらえのことば)』は、神道の祭祀で使われる祝詞の一つで、神社では毎日唱えられています。その中で、穢れを取り除く力を持つとされる瀬織津姫が登場します。
「遺る罪は在らじと。(のこるつみはあらじと。)
祓へ給ひ清め給ふ事を。(はらへたまひきよめたまふことを。)
高山の末。(たかやまのすえ。)
低山の末より。(ひきやまのすえより。)
佐久那太理に落ち多岐つ。(さくなだりにおちたきつ。)
早川の瀬に坐す。(はやかわのせにます。)
瀬織津比売と伝ふ神。(せおりつひめといふかみ。)
大海原に持出でなむ。(おおうなばらにもちいでなむ。)」大祓詞(おほはらへのことば)
瀬織津姫は、渓流の瀬に坐す神として、祓われた穢れを大海原へと運び、清める役割を果たしています。つまり、『大祓詞』により穢れは清められ、瀬織津姫の力で浄化されるとされています。
瀬織津姫の別名
瀬織津姫(せおりつひめ)は、日本神話に登場する水と浄化を司る神様で、封印されたとされることから、その存在は神話や歴史の中で神秘的に語られています。瀬織津姫とされる神様がいくつかの別名で記載されています。
向津姫(むかつひめ)
まず、瀬織津姫は「向津姫(むかつひめ)」としても知られており、ホツマツタエという書物にその名前が登場します。この向津姫は、日本書紀に記載されている「撞賢木厳之御魂天疎向津媛命」と同一である可能性が指摘されています。もしこれが正しければ、瀬織津姫は日本書紀にも登場していることになりますが、この説を裏付ける決定的な証拠はまだ確認されていません。
禍津日神(まがつひのかみ)
さらに、「禍津日神(まがつひのかみ)」という神様も瀬織津姫と関連付けられることがあります。禍津日神は、イザナギが黄泉の国から戻った際の禊で生まれた神で、災厄を祓う力を持つとされており、その役割が瀬織津姫と重なるため、両者が同一視されることがあります。
瀬織津姫は天照大御神の「荒魂(あらみたま)」としても祀られることがある
また、瀬織津姫は天照大御神の「荒魂(あらみたま)」として「撞賢木厳之御魂天疎向津媛命(つきさかきいつのみたまあまさかるむかつひめのみこと)」とされて祀られることがあり、荒魂は荒々しさや創造性を象徴します。兵庫県西宮市の廣田神社では、かつて瀬織津姫が主祭神として祀られていたとされ、天照大御神の荒魂と同一視されています。
このように、瀬織津姫はその名を変えながらも日本の神話や伝承にその存在を残しており、封印されたという説や、様々な名前で登場することが瀬織津姫の神秘性を高めています。
瀬織津姫が封印された理由、神話と歴史の狭間に消えた神格
瀬織津姫は、かつては広く信仰されていたものの、仏教が日本に広まり、神仏習合が進む中で次第に信仰の対象から外れていきました。特に平安時代以降、瀬織津姫の信仰は徐々に衰退し、彼女の神格は封印されたとされていますが、実態としては滝信仰などから概念を合わせて少し信仰対象を変えられたり、名前を変えられたりしながら根付いている神様といえます。神社で使われる祝詞で瀬織津姫が登場することからも、現代において再び注目され、浄化や癒し、祓いを象徴する神として再評価されています。
瀬織津姫が祀られている神社
瀬織津姫を祀る神社としてもっともわかりやすく認知されているのは「瀬織津姫神社(宮崎県西臼杵郡高千穂町岩戸)」や「瀬織津姫神社(石川県金沢市)」です。
また、天照大神の荒魂としての瀬織津姫を祭神とする神社として、「伊勢神宮(三重県伊勢市)」「御霊神社(大阪府大阪市西区)」「山口大神宮(山口県山口市)」「廣田神社(兵庫県西宮市大社町)」などがあります。
これらの神社では、瀬織津姫の力により、穢れを清める儀式が行われ、多くの参拝者が訪れます。これらの神社では、浄化や病気平癒を願う人々が信仰を寄せています。
瀬織津姫と現代の信仰と再び注目される神格
瀬織津姫の信仰は、現代において再評価されつつあります。彼女の浄化の力は、現代人にとっても重要な意味を持ち、精神的な浄化や癒しを求める人々にとって、大きな支えとなっています。また、瀬織津姫の信仰は、地域社会の中で再び注目され、祭りや儀式を通じて、その神格が尊重されています。
まとめ
瀬織津姫は、日本の神話に登場する重要な神格であり、清浄と浄化を司る神様です。彼女の信仰は、古代から現代に至るまで続いており、再評価されつつある今、その存在はますます重要視されています。瀬織津姫を祀る神社では、浄化や癒しを願う人々が訪れ、その力を信仰しています。