国常立尊とは?(クニノトコタチ)神世七代 最初の根源的な神様

国常立尊(くにのとこたちのみこと)は、日本神話における創世神の一柱であり、天地開闢の際に現れた最初の神々の一つとして位置づけられます。彼は「国が永遠に立ち続ける」という意味を持ち、天地の安定や大地の根源的な力を象徴する存在です。『古事記』や『日本書紀』に登場する国常立尊は、神世七代の最初の神であり、その後のイザナギやイザナミへとつながる神々の系譜において重要な役割を果たします。本記事では、国常立尊の神格や古事記・日本書紀での位置づけ、また彼を祀る神社とご利益について詳しく解説していきます。

国常立尊とはどんな神様?

国常立尊(くにのとこたちのみこと)は、日本神話における創世神の一柱で、天地開闢(てんちかいびゃく)に現れた最初の神々の中でも特に重要な存在とされています。名前の意味は「国(大地)が永遠に立ち続ける」という意味を持ち、天地の安定や大地の根源的な力を象徴しています。

国常立尊は、他の神々に先立って現れた神であり、日本の創造神話において極めて神聖な役割を担っています。そのため、日本神話における世界の基盤を築いた神として知られています。

古事記と日本書紀での国常立尊の位置づけ

国常立尊の位置づけについては、『古事記』と『日本書紀』において若干の違いがありますが、どちらも国常立尊を天地開闢の最初期に現れた神々の一柱として記述しています。

『古事記』における位置づけ

『古事記』では、国常立尊は「神世七代」の最初に登場する神として記述されています。神世七代とは、神代の時代に出現した七代にわたる神々のことで、国常立尊はその最初に現れる神です。神世七代は、日本神話において非常に重要な存在であり、最初の五柱の神々(別天津神)と続く神々(神世七代)によって日本の世界観が構築されていきます。

国常立尊はこの最初に現れたことで、日本の国土の基盤を象徴する存在となり、その後の神話に登場する多くの神々、特にイザナギやイザナミにつながる重要な系譜の始まりを担っています。

『日本書紀』における位置づけ

『日本書紀』では、国常立尊は「国之常立神」として登場し、天地創造の際に最初に現れた神々の一柱として記述されています。ただし、『日本書紀』には複数の伝承があり、国常立尊の位置づけや登場順は異なる部分もありますが、いずれも天地創造に関わる重要な存在として位置づけられています。

国常立尊(古事記)、国之常立神(日本書記)、別名は?

国常立尊は、『古事記』では「国常立尊」として、『日本書紀』では「国之常立神(くにのとこたちのかみ)」と表記されています。また、他の文献や信仰の中では「国常立大神」や「国魂(くにたま)」とも呼ばれることがあり、その神格や役割に応じて様々な名前で表現されています。

名前に含まれる「常立(とこたち)」には、「常に立ち続ける」「永遠の存在」といった意味が込められており、国常立尊が変わらない普遍的な力や存在であることを示しています。

国常立尊と造化三神、別天津神、神世七代との関係

国常立尊は、造化三神の一柱ではないことが重要なポイントです。造化三神とは、天地開闢の際に最初に現れた三柱の神で、具体的には次の神々を指します。

これら三柱は「造化三神」と呼ばれ、日本神話の創世の始まりに位置づけられる神々です。これに対し、国常立尊は造化三神ではなく、次に現れる別天津神(ことあまつかみ)およびその後の神世七代の最初の神です。

別天津神(ことあまつかみ)

国常立尊がどのような流れでお生まれになられたかを知るために、造化三神を含む五柱の神である「別天津神」を知ることが必要です。別天津神は、造化三神の後に現れる神々です。

順序 神の名前
第一柱 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
第二柱 高御産巣日神(たかみむすびのかみ)
第三柱 神産巣日神(かみむすびのかみ)
第四柱 宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)
第五柱 天之常立神(あめのとこたちのかみ)

別天津神は直接的に活動する神ではなく、主に天地の秩序を保つ役割を担う存在として位置づけられています。

神世七代(かみよななよ)

別天津神はすぐさま身を隠したと古事記に記されています。そして、神世七代に入り、国常立尊は「神世七代」の最初に位置づけられます。神世七代とは、神代の時代に次々と現れた七代の神々のことです。

神世七代一覧表

代数 神の名前
第一代 国常立尊(くにのとこたちのみこと)
第二代 豊雲野尊(とよくもののみこと)
第三代 宇比邇神(うひぢにのかみ)・須比智神(すひぢのかみ)
第四代 角杙神(つのぐいのかみ)・活杙神(いくぐいのかみ)
第五代 意富斗能地神(おおとのぢのかみ)・大斗乃弁神(おおとのべのかみ)
第六代 淤母陀琉神(おもだるのかみ)・阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)
第七代 伊邪那岐神(いざなぎのかみ)伊邪那美神(いざなみのかみ)

国常立尊はこの神世七代の初代の神であり、その後の神々の系譜につながっていきます。この系譜は、後にイザナギやイザナミなどの国生み・神生みに至るため、日本神話の国土形成の流れをつなぐ重要な役割を果たします。

国常立尊と大本教などの新宗教

国常立尊(くにのとこたちのみこと)は、日本の新宗教である大本教やその影響を受けた宗教において、重要な神として信仰されています。大本教は明治時代に出口なおと出口王仁三郎によって創始され、国常立尊を「地上を統治する根源神」と位置づけ、地上世界の秩序を回復し、人類を救済する神と見なしました。

大本教では、国常立尊は神世七代の後、長く封印されていたが、再び復活して人々を導く存在とされています。この思想は、日本神話をベースにしながらも、新たな解釈を加えたもので、多くの新宗教(たとえば金光教や生長の家)にも影響を与えました。国常立尊は、新宗教において宇宙の秩序や人類の救済を象徴する神格として重要な役割を担っています。

国常立尊を祀る神社とご利益

国常立尊は、全国各地で信仰されており、多くの神社で祀られています。

国常立尊を祀る神社では、「国土の安定」「家内安全」「商売繁盛」「厄除け」などのご利益があるとされています。特に国常立尊は、人々の個人的な悩みや願いを叶えることもご利益としてはあげられていますが、国を作った神様として大地や国土を守護する力を持たれていることから、土地の繁栄や災害からの守護を祈願する人々にとって重要な存在とされています。

まとめ

国常立尊は、神世七代の最初の神として、天地開闢の創世において非常に重要な位置づけを持つ神です。その役割は日本神話における根源的な神々の系譜を形成することであり、後に続くイザナギ・イザナミや国生み神話への流れに大きな影響を与えました。国常立尊を祀る神社では、国土の安定や繁栄、家内安全など、多くのご利益が期待されており、その神格は現代に至るまで信仰され続けています。