十拳剣(とつかのつるぎ)とは?神々が使用した重要な剣

日本神話には、多くの伝説的な武器が登場します。その中でも特に有名なのが「十拳剣(とつかのつるぎ)」です。この剣は、数々の神話に登場し、重要な役割を果たしてきました。ここでは、十拳剣が登場する場面やどの神様が使用したかを、時系列で詳しく見ていきましょう。

十拳剣(とつかのつるぎ)とは?

十拳剣(とつかのつるぎ)は、日本神話に登場する長さが約10拳(こぶし)分の剣の総称です。十拳剣は固有の剣を指すものではなく、こぶし10個分ぐらいの長剣であることを表しています。様々な場面で使用されるため、物語ごとに異なる剣であるとされています。

イザナギとイザナミの黄泉の国のエピソード

最初に十拳剣が登場するのは、創世の神々であるイザナギイザナミの物語です。イザナミが火の神カグツチを産んで亡くなった後、イザナギは黄泉の国に彼女を連れ戻しに行きました。しかし、黄泉の国での出来事に恐怖を感じたイザナギは、十拳剣を用いて黄泉の国の入り口を塞ぎました。この剣が、後に様々な神話で登場する十拳剣です。

須佐之男命と天照大御神の誓約(うけい)

次に十拳剣が重要な役割を果たすのは、須佐之男命(スサノオノミコト)と天照大御神(アマテラスオオミカミ)の「誓約(うけい)」の場面です。須佐之男命は、姉である天照大御神に自分の潔白を証明するために、この剣を差し出しました。天照大御神はこの剣を受け取り、それを噛み砕いて三柱の女神を生み出しました。

天照大御神と須佐之男命の誓約で生まれた神々

天照大御神と須佐之男命の誓約によって生まれた神々の中にも、十拳剣が関わっています。この剣は天照大御神が使用し、多紀理毘売命(タギリビメノミコト)、市寸島比売命(イチキシマヒメノミコト)、多岐都比売命(タギツヒメノミコト)という三柱の女神を生み出しました。これらの女神は「宗像三女神」として知られています。

須佐之男命とヤマタノオロチ退治

十拳剣が再び登場するのは、須佐之男命がヤマタノオロチを退治する場面です。須佐之男命は、出雲国で八つの頭と八つの尾を持つ大蛇ヤマタノオロチに出会い、この恐ろしい怪物を退治するために十拳剣を使用しました。この戦いの後、須佐之男命はヤマタノオロチの尾から「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」を見つけました。

タケミカヅチと国譲り

十拳剣はさらに、国譲りの神話でも重要な役割を果たしました。高天原から地上を治める命を受けたタケミカヅチ(建御雷神)は、地上の支配者である大国主命に国譲りを迫る際に、この十拳剣を使用しました。タケミカヅチは十拳剣を逆さまにして地面に突き刺し、その上に座って大国主命に国譲りを要求しました。この威圧的な姿勢と強力な剣の力により、大国主命は国譲りに応じました。

考察

十拳剣を用いて黄泉の国の入り口を塞いでいたはずなのにスサノオノミコトが十拳剣を持ち出していることや、十拳剣が噛み砕かれた後に再び登場することについては、具体的な復元の記述は存在しません。しかし、日本神話の物語では、神々の力や神話的な象徴性から同じ剣が再び使用されることがあると考えられます。神話における道具や武器は、その象徴する意味や力が重要であり、物理的な状態よりも神話全体の流れや意味が優先されることが多いのです。神話の中では、同じ名前や性質を持つ複数の剣が存在する可能性も考えられます。

まとめ

十拳剣(とつかのつるぎ)は、日本神話において非常に重要な役割を果たす武器です。イザナギが黄泉の国で使用し、須佐之男命と天照大御神の誓約で再び登場し、さらにヤマタノオロチ退治や国譲りの際にも使われました。この剣は、神々の力と勇気を象徴する存在として、今もなお語り継がれています。物語の細部に矛盾があったとしても、その象徴性や重要性は変わりません。