天照大御神とスサノオノミコトの「誓約(うけい)」とは?

日本神話の中でも特に重要なエピソードの一つに、天照大御神と須佐之男命の「誓約(うけい)」があります。この儀式は、神々の力と誠実さを証明するためのものであり、皇位継承の正当性を示す大切な出来事として古事記に記されています。誓約が行われた背景、使用された道具、そして誓約によって誕生した神々について詳しく見ていきましょう。

日本神話の重要な出来事「誓約(うけい)」とは?

日本神話における「誓約(うけい)」は、天照大御神と須佐之男命が行った一種の占いのような儀式です。

誓約(うけい)は、現代ではなかなか信じがたい方法ですが、日本神話の中では神様が大切なものから新たな神様を産む際に、男の神様が生まれるか女の神様が生まれるかで、良いことなのか悪いことなのかを占うおみくじのようなものです。

この儀式は、皇位継承の正当性を証明するための重要な出来事であり、神々の力と意思を示す場面でもありました。古事記に記されているこの誓約は、天照大御神と須佐之男命の対立と和解の象徴的なエピソードとして知られています。

誓約(うけい)が行われた経緯

須佐之男命は、父神である伊邪那岐命から海原の統治を命じられました。この時、母神である伊邪那美命は既に黄泉の国(よみのくに)にいました。伊邪那美命は火の神である軻遇突智(カグツチ)を生んだ際に火傷を負い、その結果亡くなり黄泉の国に向かったのです。伊邪那岐命は、妻である伊邪那美命を取り戻そうと黄泉の国に向かいましたが、結局失敗し、戻ってきました。

黄泉の国から戻った後、伊邪那岐命は穢れを祓うために禊(みそぎ)を行いました。この禊の際に、多くの神々が生まれました。その中でも特に重要なのが、天照大御神月読命、そして須佐之男命です。伊邪那岐命は、天照大御神に高天原の統治を、月読命には夜の世界の統治を、そして須佐之男命には海原の統治を命じました。

しかし、須佐之男命はその責任を果たさず、泣いてばかりいました。そのため、伊邪那岐命の怒りを買い、須佐之男命は高天原から追放されることになりました。

追放された須佐之男命は、姉である天照大御神に別れの挨拶をするために高天原を訪れました。しかし、須佐之男命の力強い振る舞いから、天照大御神は弟が自分の国を奪おうとしていると誤解し、疑念を抱きました。この疑念を晴らすために、須佐之男命は自らの潔白を証明するために誓約を提案しました。

誓約(うけい)で使われた道具・物

誓約では、天照大御神と須佐之男命がそれぞれの持ち物を交換し、それを使って子供を産むことでその潔白を証明しました。

具体的には、須佐之男命は天照大御神の持っていた勾玉を、天照大御神は須佐之男命の持っていた十拳剣(とつかのつるぎ)を使いました。これらの道具は、神々の力を象徴するものであり、それぞれの神の本質を反映しています。

誓約(うけい)で生まれた神様

天照大御神が須佐之男命の十拳剣を噛み砕いて産み出した宗像三女神

誓約の結果、天照大御神と須佐之男命の持ち物から多くの神々が生まれました。まず、天照大御神が須佐之男命の十拳剣を噛み砕いて産み出したのは、以下の三柱の女神です。これらの女神は、宗像三女神と呼ばれています。

須佐之男命が天照大御神の勾玉を噛み砕いて産み出した五柱の男神

一方、須佐之男命が天照大御神の勾玉を噛み砕いて産み出したのは、以下の五柱の男神です。これらの男神は、五男三女神(ごなんさんじょしん)と総称されます。

  • 正勝吾勝勝速日天忍穂耳命(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)
  • 天穂日命(あめのほひのみこと)
  • 天津彦根命(あまつひこねのみこと)
  • 活津彦根命(いくつひこねのみこと)
  • 熊野久須毘命(くまのくすびのみこと)

このようにして、誓約によって生まれた神々は、それぞれの神の純粋さと誠実さを証明し、また日本神話の豊かな神々の系譜を形成しました。この誓約は、神々の世界における重要な出来事であり、皇位継承の正当性を裏付けるための儀式として、日本神話において特別な意味を持っています。

須佐之男命は誓約をしたあとに高天原で大暴れ

スサノオノミコトは誓約により潔白を証明しましたが、その後高天原で大暴れをしてしまい、天照大御神は怒りと悲しみで天岩戸隠れをしてしまいます。

須佐之男命は出雲の国でヤマタノオロチ退治

誓約が行われたのは、須佐之男命がヤマタノオロチを退治する前の出来事です。須佐之男命は高天原から追放された後、出雲の国に降り立ち、そこでヤマタノオロチを退治します。その際に、草薙剣(くさなぎのつるぎ)を得ることとなります。ヤマタノオロチ退治のエピソードは、須佐之男命が天照大御神との誓約を経て地上に降りた後の出来事です。