日本神話には、死後の世界や冥界に関する様々な伝承が存在します。その中でも、「根の国」と「黄泉の国」は特に重要な役割を果たします。根の国はスサノオノミコトが治める地下の世界であり、黄泉の国は死者が行く場所とされています。本記事では、これら二つの国の違いと、それぞれの役割について詳しく解説します。また、スサノオが大国主に与えた試練についても触れ、日本神話の深遠な世界を探求します。
根の国とは
根の国は、須佐之男命(スサノオノミコト)が行くことを望んだ母の国とされています。この国は、スサノオが亡き母の霊に会いたいという願いから、彼が向かうことを希望した場所です。根の国は地下の世界として描かれており、具体的には地上のどの場所と対応するのかは明示されていませんが、出雲地方と関連が深いとされています。
根の国にスサノオが向かうエピソードは古事記でどのように書かれている?
各神々が、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)の命令に従ってそれぞれの国を治めている中、須佐之男命(すさのおのみこと)は、自分に委任された国を治めずに、成人して長いあごひげが胸元に届くまで泣きわめいていました。その泣く様子は、青々とした山を枯れ木の山のように泣き枯らし、川や海をすべて泣き乾してしまうほどでした。そして、悪神の声が夏の蠅のように充満し、あらゆる災いが次々と起こりました。
そこで、伊邪那岐大御神(いざなぎのおおみかみ)は須佐之男命に、「なぜ国を治めずに泣きわめいているのか」と尋ねました。須佐之男命は、「亡き母の国である根之堅洲国に参りたいと思って泣いているのです」と答えました。これを聞いた伊邪那岐大御神は非常に怒り、「それならば、この国に住んではならない」と言って、直ちに須佐之男命を追放しました。そして、伊邪那岐大御神は近江の多賀に鎮座しました。
須佐之男命は母の故郷である出雲と伯耆の境近辺の根の国へ向かう前に、姉である天照大御神に別れの挨拶をしようと高天原へ上りました。しかし、天照大御神は弟が攻め入って来たのではと思い、武装して応対しました。須佐之男命は自分の疑いを解くために誓約(うけひ)を行いました。
誓約によって自分の潔白が証明されたと主張しましたが、その後、彼は勝手に粗暴な行為を次々と行いました。これに恐れを感じた天照大御神は天の岩屋に隠れてしまいました。このため、須佐之男命は高天原を追放されました。
黄泉の国とは
黄泉の国は、イザナミが死後に住まう場所として描かれています。この国は死者の世界であり、生きている者が入ると穢れを受ける場所として恐れられています。イザナギがイザナミを連れ戻そうとした際に訪れた黄泉の国は、死者の世界としての性質を強調されており、生と死の境界を象徴する場所です。
根の国と黄泉の国の違いはある?
根の国と黄泉の国は、どちらも地下にある異界ですが、性格や役割が異なります。根の国はスサノオの母であるイザナミと関連がある場所であり、彼が母に会いたいという願いから訪れることを希望した場所です。一方、黄泉の国は死者が行く場所であり、イザナミが死後に住まう場所として描かれています。
古事記において、根の国はスサノオの母の国として登場し、スサノオがそこに行くことを希望しますが、具体的な描写はあまり多くありません。対して、黄泉の国は詳細に描かれ、イザナギがイザナミを連れ戻そうとした際の出来事が詳しく語られています。
このように、根の国と黄泉の国はそれぞれ異なる役割を持つ異界であり、日本神話における生と死、祖先の霊との関係を象徴しています。
スサノオと根の国
古事記では、スサノオノミコトは、根の国の支配者として描かれます。スサノオは出雲神話で有名であり、大国主命が試練を受ける場所としても登場します。スサノオは根の国で大国主に数々の試練を与え、彼の強さと知恵を試します。
大国主命と根の国
大国主命は、スサノオの試練を受けるために根の国を訪れます。大国主命はスサノオの娘、スセリビメと結婚しようとしますが、そのためにはスサノオの厳しい試練を乗り越えなければなりません。試練を克服することで、大国主は真の支配者としての資質を証明し、スセリビメを妻とすることが許されます。